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2015.06/28 科学と技術(8)

感材に用いるラテックスの製造現場で、合成後の物上げ直前にひしゃくを用いるという20年以上前に開発された技を発見し使わせてもらった。ところが最初に考案された時に5回使用していた点が気になった。当方の経験では、上手くやれば一回で良いプロセスであり、また現場の作業者も1回でも大丈夫と言っていた。

 

当方は、個人差と誤差を考慮し3回と決めたが、5回とした理由を知りたかった。しかし、製造現場の手順書は存在したが、開発部門の報告書は廃棄されていたのでそれを知るための手段は無かった。

 

ひしゃくで表面を5回すくい廃棄しているのだから、物上げを工夫して表面付近のラテックスを廃棄すればよい、と考えたが、それならば、実験室でも再現できそうな現象である。しかしこの現象は実験室で再現できないことがわかった。

 

そもそもこの二十年以上前に開発されたラテックスと同じ物性のラテックスを実験室で合成できないのだ。工場で生産されたラテックスと実験室のそれを用いて単膜を作り、粘弾性評価を行うと一致しない。両者ともに品質規格内のラテックスができるのだが、粘弾性データを比較すると明らかに異なる材料である。

 

あれこれ実験を行い、ひしゃく5回の謎を探っていたら、面白いアイデアに気がついた。ノウハウに関する技術であり、公開を差し控えたいが、その技術を用いると工場で生産されているラテックスをコストダウンできることに気がつくとともに、ひしゃく5回を考えた技術者の気持ちを理解できたようなひらめきがあった。

 

科学的なひらめきではないので間違っているかもしれないが、5回とした技術者はただ者ではない、と想像するとともに、20年前の技術は現場で最適化された可能性が高いと推定した。この推定から当時の勤務体制と現在の体制との違いも知った。勤務体制が変わったので、ひしゃくの回数を減らすことができた可能性が高い。

 

 

カテゴリー : 一般

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