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2016.10/26 ホウ酸エステル(2)

燃焼時の熱でボロンホスフェートを合成し、基材の高分子を難燃化するアイデアは、当時として画期的であった。しかし、貯蔵安定性にすぐれたホウ酸エステルの分子設計が問題となった。すなわち、簡単な構造のジオールとホウ酸から合成されるホウ酸エステルでは耐水性が無いので、工場で使用できない。
 
しかし、この問題はたまたま実験室にジエタノールアミンがあったので、簡単に解決できた。もっともポリウレタンの研究開発を行う部門だったので、ジオール類は一通りそろっていた、という好条件が幸いした。運が良かったのだ。
 
ホウ酸とジエタノールアミンとの反応は簡単だった。両者を混合し、100℃で1時間程度攪拌するだけで合成された。水が副生するが、軟質ポリウレタンフォームでは発泡剤として水を使用するので脱水する必要は無かった。
 
面白いのは、脱水しなくてもホウ酸エステルの構造で安定に存在している現象だった。マススペクトルで、6ケ月経過後のホウ酸エステルを評価しても合成直後と変わらなかった。また、ポリウレタンの反応にもジエタノールアミンの効果を考慮すれば、影響がないと結論できた。
 
ホウ酸エステルとリン酸エステルを併用して軟質ポリウレタンに添加したところ、期待通りの高い難燃効果が得られ、燃焼後の残渣には材料設計通りボロンホスフェートが残っていた。
 
指導社員の指示で、市販の主だったリン酸エステルとの組み合わせについて実験を行った。50配合程度評価したので、その燃焼結果を多変量解析した。その結果、統計学的にもホウ素とリンとの交互効果が確認された。リン酸エステルについて主成分分析を行い、化合物の分類をしてはいたが、残渣分析の結果からは、リン酸エステルの構造の影響はほとんど無かった。
  
 

カテゴリー : 一般 高分子

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