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2017.01/24 高分子材料(14)

高分子材料の力学物性を改良するときに、その高次構造を漫画で表現してみるとアイデアを出しやすい。この時、500から800nm以上のサイズは靱性に影響を与える因子になる。

 

逆に100nm未満の構造は靱性に影響を与えない。界面がうまくデザインされれば、靱性向上効果が現れることもある。また、クラスターが形成されたときも同様に考えるとよい。クラスターのサイズがどのくらいまで大きくなるのかということに注意する。大きくなればやはり靱性に影響を与える。

 

ゼラチンの改良では、この漫画がきっかけとなり開発が一気に進んだ。すなわち、シリカのナノ粒子とラテックスが凝集することなく分散している様子をホワイトボードに書いたところ、一人の担当者が、コアシェルラテックスの合成実験で失敗した時の材料が同じような状態になっているかもしれない、と発言したからだ。

 

この発言に対して、当方は、それが正解だ、すぐにその材料で研究開発を進めろ、と指示した。すると、一週間ほどでホワイトボードに描いた漫画と同じゼラチンバインダーができた。驚くべきことにこのバインダーは、何も添加されていないゼラチンバインダーよりも靱性が高かった。

 

コアシェルラテックス開発過程の失敗した実験がきっかけとなり、新たな技術が生まれたのだが、これはコーチングの成果であり、当方がコーチングをしなければ絶対に誕生しなかった技術だ。写真会社で感材用高分子技術開発を指導していた時に、このような当方がそこにいなければ生まれなかった発明で多くの成果を出している。

 

面白いのは当方が所属した部門は高分子技術開発を担当していた部門で、メンバーの大半は当方よりも高分子技術に詳しかった。しかし、皆教科書どおりの考え方で仕事を進めていた。当時は高分子物理が発展途上であり、教科書よりも学会で生のデータに接することの方が重要な時代だった。

 

カテゴリー : 高分子

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