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2017.02/25 高分子材料(42)

PPSと6ナイロンのχパラメーターは正となるので、高分子の教科書に書かれていることが正しいならば、両者の混練物の高次構造は海島構造となるはずだ。

 

しかし、バンバリーを運転していて両者が相溶したように見えた瞬間があった。実験は仮説を設定して行え、というのは科学を重視した業務プロセスでは効率的で重要な姿勢である。

 

バブルがはじけたときにホワイトカラーの合理化が叫ばれ、実験について如何に効率的に行ったらよいのか、各企業でCTOが腐心し徹底し仮説に基づく実験を推進した会社もある。

 

ただしそこに落とし穴があった。すなわち科学で正しいと思われる現象だけを重視して技術開発が進められるようになったのだ。しかし高分子材料には未だ科学で否定されるが時々発現してしまう非科学的現象が存在する。

 

あたかもSTAP細胞のようなことが高分子の研究開発で起きる。理研のSTAP細胞の騒動では否定証明で結論が出され、STAP細胞は存在しないとされた。しかしその後ドイツの研究者からSTAP現象の報告がなされた。

 

科学的方法で技術開発すべき、という考え方を否定するつもりはないが、高分子材料の開発では非科学的方法も新しい技術を見つけるために重要だと思っている。

 

この欄で、電気粘性流体の増粘問題を科学で否定証明された方法、すなわち解決できない手段と結論された界面活性剤を用いて解決した事例を紹介しているが、科学という哲学で完璧に証明できたとしても、それに反する現象が現れたなら真摯にその現象と向き合う謙虚さが大切である。

 

このあたりはイムレラカトシュの「方法の擁護」にも書かれていない科学的思考法の盲点である。高分子材料の開発ではこのような科学的思考方法の盲点を知ったうえで科学を技術開発に適用しなければいけない。そして時には科学のなかった時代の技術者のような開発を試みて、新発見のチャンスを創り出さなければいけない。

 

PPSと6ナイロンを相溶させることに成功したカオス混合の発明は、ゴムの混練経験を基に生み出した成果である。科学的ではなく30年前の体験を懐かしく思い出しながら、時には情緒的な思考(注)を重ねヒューマンプロセスで開発している。

 

(注)PPSと6ナイロンでは溶融温度が大きく異なり、両者を溶融状態で混練する場合には、極めて粘度差が大きい高分子を練り上げなければいけないことになる。それをうまく実現できたコンパウンドメーカーR社の技術は、例えベルト用のコンパウンドを完成できなくてもコンパウンダーとして高いレベルにあったと尊敬していた。しかし、せっかくのアイデアの申し出に対して、「素人はだまっとれ」という謙虚さの無い態度では、お客も新しい技術や成功の機会も皆逃げてゆく。ドラッカーは誠実真摯であれ、とその著書でよく説いているが、マネジメントだけでなく技術開発を推進する当事者にとっても大切な心構えである。もし外部のコンパウンダーが適切に対応してくれたなら、当方が休日返上の過重労働をしなくても済んだのである。ただ貢献と自己実現を目標にかかげ努力した成功体験が過去に何度もあったので、苦労を楽しさとして味わうつもりで素人でも黙っていることができず行動した。苦しい仕事と予想されるなら、それを実行しようとする自分を褒めてやることが大切である。オリンピックの女子マラソンで二位となり、インタビューで「自分を褒めてやりたい」と発言した美人ランナーがいるが、本当の苦労の仕方を知っている人である。大変リスクが高いが自分以外は成功の可能性が見えていないという状況は人生で時々現れる。そのようなリスクの高い状況でも結果が組織に対して大きな貢献となるならばたとえ報われることが無くても、チャレンジすべきである。そのチャレンジしようとしている自分を、さらにチャレンジした自分を本当に褒めてくれるのは神と自分しかいない。周囲には成功したときに妬みすら持つ人がいるのが人間社会である。電気粘性流体や高純度SiCの事業化を成功に導きながらゴム会社から転職しなければいけなくなった状況を思うたびに美人ランナーの言葉の意味を考えてしまう。

カテゴリー : 高分子

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