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2017.06/23 事例(1)

カラー電子写真に中間転写ベルトと呼ばれる10の9乗から10の11乗Ωcmの範囲の半導体部品がある。紙に情報を転写する前にYMCK4色の画像を一度このベルト上に書き込む。ゆえにこのベルトの面内の抵抗値がばらつくとこの情報が正確に紙に転写されなくなる。

 

均一な半導体ベルトを製造するために、溶媒に溶かしたPI樹脂にカーボンを分散し、キャスト製膜してベルトに仕上げる。これを押出成形で製造しようとするとカーボンの分散状態を制御できず、その結果ベルトの面内抵抗値のばらつきとなって現れる。

 

押出成形に用いるコンパウンドの段階で、カーボンの分散がどの程度安定化されているかが重要となる。すなわちコンパウンド段階でカーボンが不均一に分散していると成形金型内でカーボンの分散が進み、その結果金型内で分散状態が変化して抵抗のばらつきとなる。

 

写真会社とカメラ会社が統合されたときにPPS/ナイロン/カーボンの処方のコンパウンドを外部から購入しこのベルトを生産するための押出成形技術の開発が行われていた。

 

コンパウンドメーカーはカメラ会社の押出技術が未熟だから成形がうまくゆかない、という考え方であった。押出成形という技術をよく知らないコンパウンドメーカーを選ぶとこのような困った問題になるが、このコンパウンドメーカーは一応日本を代表する一流会社だった。

 

コンパウンドの段階でカーボンの分散状態を安定化してほしい、とお願いしても安定化という抽象的言葉のため聞き入れてもらえない。挙げ句の果ては、素人は黙っとれと言われる始末。

 

そこまで言われたので、子会社の敷地の隅にコンパウンド工場を建てて自分でコンパウンドの開発を行ったのだが、この時開発時間など無かったので科学的プロセスを採用しなかった。いきなり抵抗の安定したベルトを100%近い収率で得られるコンパウンドを製造できる技術を開発できる、「アジャイル開発」プロセスで進めた。

 

半年間でコンパウンドの量産プロセス以外に、「カーボンの分散状態が安定化できている」ことを調べる品質評価法や「ベルトの抵抗値をコンパウンド段階で測定」できる品質評価法を開発している。しかも当方含め3人でこのコンパウンド生産工場の仕事を仕上げている。

 

ただし学会発表できるようなデータは何も無い。データとして存在するのは品質評価法がベルト品質と対応しているかどうかを調べたデータだけである。日本を代表する一流メーカーで実現出来なかった技術を素人集団で創りあげている。

カテゴリー : 一般

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