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酸化第二スズ

酸化第二スズ単結晶は絶縁体です。しかし酸化第二スズのような金属酸化物は、酸素欠陥ができると半導体になり、その抵抗は10の11乗台から10の3乗台まで変化します。Inをドープすれば、ITOと呼ばれる透明導電体に、Sbをドープすれば同じくATOと呼ばれ透明導電膜として使用されている。このあたりの物性については昭和30年代に詳しく研究されており、昭和35年には写真感材の帯電防止層として小西六工業から塗布技術の内容で特許出願がされている(特公昭35-6616)。その後イースタマンコダックから蒸着によるITO膜を用いた特許が出願されているので、日本がこの方面で先行していたのだろうと思います。

 

昭和35年の特許では、高純度酸化第二スズのゾルが用いられており、その塗膜の物性まで実施例に書かれている。しかし、1991年になるまでその特許の存在は忘れられていました。また、各社から出願される帯電防止関係の特許の従来技術にも1980年以降出願された特許には書かれていませんでした。1970年前後の帯電防止の特許を調べていましたら、従来技術にこの昭和35年の特許の存在が書かれており、この特許の実施例が不十分という説明がありました。すなわち実施例の再現性が無い、と書かれており、その特許がなぜか類似内容にもかかわらず公告特許になっていました。おそらく誰も異議申し立てをしなかったものと思います。

 

さて、その昭和35年の特許ですが、実施例を実験室で再現しようとすると、ばらつきます。原因はパーコレーション転移のためで、パーコレーション転移を制御すれば、昭和35年の実施例は容易に再現することができます。おそらく1970年の特許はこのあたりをうまく利用し、インチキ特許を書いたものと思います。

 

1991年にコニカへ転職し最初に企画しましたのは、特公昭35-6616を中心にした帯電防止技術の構築プロジェクトです。当時は、転職したばかりで2ケ月ほど特に定職が無かったのでパーコレーション転移のシミュレーションソフトを開発し、特公昭35-6616技術について酸化第二スズ粒子の導電性見積り、アスペクト比の見積もり等を行いました。シミュレーション結果をもとに特許出願を4件ほど行いました。