2018.10/26 高分子の熱分析(1)
高分子加工の大半は加熱し溶融状態から固化するまでの形を自由に変えられる状態で加工されることが多い。加硫ゴムも一度溶融させて加硫反応を行いながらモールドの中で賦形化する。
ゆえに高分子の熱分析は、成形体に品質問題などの異常が出たときにまず行われる方法である。ゆえに高分子加工に携わるメーカーは、熱分析装置の一つや二つは持っていて欲しい。できれば3種類以上持っていると鬼に金棒である。
弊社は分析機器メーカーから特別にPR料を頂いていないので、どこのメーカーの装置がよいかは特に書かないが、それでも3種類は必要だと思っている。しかし、予算の関係もあるので一種類であれば何がよいか、と言われる方もいると思うので、熱分析装置の序列も意識して説明を書いてみる。
もし、分析機器メーカーの方がこの欄を読まれPR料を弊社に支払われたとしても、この序列は当方の経験から変わらないことを付け加えておきたい。そしてそれぞれの装置について、どこのメーカーがよいかは、特にここで今回は触れない。
もちろん分析機器メーカーからPR料を頂ければ、その装置をお客様にご紹介させていただく仕事は請け負うが、ここで書く必要な序列はそれでも変更しない。
さて、その購入順序だが、熱容量の変化を知るためのDSCは、まず持っていたい装置だ。これ1台あるだけで、おおよその問題の検討がつく。次に成形体の寸法変化や精度が問題となるメーカーではTMAが欲しい。しかし、少しお金を出せば粘弾性装置が買えるのでそれが2番目に必要な装置になる場合もある。
このあたりは、予算との兼ね合いとメーカーの都合で序列は変わる。DSCとTMAもしくは粘弾性装置の次に買い揃えたいのは、TGAである。DTAのついた複合型もあるのでDSCを購入する代わりに、TGA・DTA複合装置を一番に押される先生もおられるが、当方は経験上DSCが一番だと言いたい。DSCとDTAでは測定機構が異なる。
熱分析装置については分析機器メーカーの個性があり、一長一短である。40年前にこれらの熱分析装置を全て扱うメーカは、国内外に多くあったが、現在は淘汰されて撤退したメーカーや倒産したメーカーも多い。また、これらの分析装置メーカーとして知られなくなったところもある。
例えば今はある企業の傘下に入ったS社は、カタログにこれらの分析装置を載せていないが、注文すれば製造してくれる、ある意味マニアックなメーカーで当方が分析装置を購入するときに必ず候補に入れるメーカーだ。
その昔、超高温熱天秤を共同開発したときには痛い目にあったが、痛い目にあいつつも喧々諤々の議論をしても、某コンパウンドメーカーの技術サポートのような、「素人は黙っとれ」と言った無礼な発言を決してしなかった。
それ以来、熱分析装置を当方が購入しなければいけないときには、このS社にお願いしている信頼度の高いメーカーだが、もうカタログにこれらの機器を載せていない。ちなみにこのメーカーにこれらの装置を発注すると、手作りのマニュアルと武骨なデザインの、いかにも手作りの装置が納入されるが、頑丈で信頼性がある。
2006年に購入した熱分析装置は今でもトラブルなしで稼働していると噂に聞いた。使い勝手の悪い装置だったが、市販品では計測できない精度が出る優れもので、超低温から高分子材料用では高温度まで測定可能な唯一無二の装置である。
熱分析装置の場合には既製品では対応できない場合もあるので購入には注意したい。大抵の高分子には対応しています、と言われても扱っている高分子に対応していなかったら無用の長物となる。
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