2019.04/23 ハイブリッド車と電気自動車の問題
最近の話題としてアクセルとブレーキの踏み間違いによる悲惨な事故がある。ネットでは事故後の運転者の扱いの差異から上級国民というキーワードが飛び出しており、問題の本質から視点がずれているように思われたので、本日取り上げてみた。自動車会社の技術者にはぜひ読んでいただきたい。
一連の事故の本質的問題は、自動車の進化過程で、自動車の基本機能「走る」、「止まる」、「曲がる」の3要素における「止まる」が軽視されてきた点にある。
40年以上前、自動車学校で車を止めるときの動作として、「アクセルから足をはなす」→「クラッチに足を乗せる」→「シフトダウンする」→「ブレーキを踏む」→「クラッチを切る」→「ブレーキを力いっぱい踏み車を止める」と習った。止める動作は、基本3要素の中で最も手間のかかる作業、あるいは「走る」や「曲がる」とは明らかに異なる動作になり、止めるときに足はアクセルから離れるように昔の車は設計されてきた(アクセルから足を離さなければ、車を止められなかった、これが重要である。日産リーフのすごいところはこれを実現している点だ)。
これは、教習所の第一段階の試験で1回落ちたときの理由だったのでよく覚えている。すなわち、この試験の時にエンジンブレーキをかけずにブレーキだけで停車したことが大きな失点となり落第している(ただし、この時瞬間的にクラッチを切り、エンストを防いでいるのでOKと誤解していた。すなわち、止まればよいとだけ考えていた。教習所の先生に教えられた、止めるときにアクセルから足を離す動作を体に覚えさせる深い意味を考えていなかった。車を止めるときには絶対にアクセルから足を離すこと、そのためのエンジンブレーキと強く言われた。)。
この失敗以来、必ずエンジンブレーキをかけて停止するように心がけてきた。このためオートマチック車に乗ってもエンジンブレーキをかける工夫をして気がついたことがある。この30年の車の進化過程でエンジンブレーキの「車を止める人の動作に果たす役割」を自動車メーカーの技術者が忘れかけてきていることである。
例えばハイブリッド車や電気自動車では、エンジンブレーキではなくエネルギーの回生システムがその役目を担うようになり、自動でブレーキがかかるようになっている。これは「安全」の視点では「止める」技術が後退(注)していることを意味している、と当方は捉えているが、これを補間する技術開発を日産以外のメーカーは忘れてしまったようだ。
日産の電気自動車は、1ペダルであり、車を止めるときにはペダルから足を離せば自動車が安全に車を止めてくれる先進的なシステムだ。これについては、試乗してさすが技術の日産と生まれて初めて感じた。
すなわち、「車を加速する」動作と「車を止める」動作を明確に異なる動作に分けている。ただ、このペダルが踏みやすい位置にあるのは問題だ。安全を優先したら踏みにくい位置にすべきである。万が一を考えて、リーフを購買対象から外した理由である。
1年ほど前に車を購入するとき、ハイブリッド車に試乗したが、エンジンブレーキを自分で制御できないのでやめた。最近はパドルシフトが流行しているが、これもついていない車だった。営業マンにエンジンブレーキの話をしたら、ピントのずれたエネルギー回生システムの説明をしてくれた。
すなわち、ハイブリッド車はブレーキを踏む以外に車を減速し止める手段が無いばかりか、加速する動作と止める動作が同じ動作になる欠陥車と呼びたくなるような車なのだ(「止める動作と走る動作を明確に異なる動作にしたハイブリッド車」は、特許調査をしたところ出願可能なクレームだ。)。
さらにアクセルを緩めれば車は回生ブレーキが働き減速させることができるが、足は常にアクセルペダルに乗っている。これは「車を止める動作」と「加速する動作」に区分けが無く「大変危険だ」と思った(と、同時に特許を出せる技術につながるとも思ったが、自動車の安全を願いやめている)。
減速動作と加速動作が同じペダルで行われ、減速動作から停止動作に移る時に、停止動作だけを意識することになる。停止動作に移る前に「アクセルから足をまず離す」という安全につながる動作を車が要求していないのだ。
さらに説明を加えれば、ペダルこそ違ってはいるが、加速動作も停止動作もペダルを踏むという同じ動作になっており、ペダルを間違えたなら大事故につながる仕組みが現在のハイブリッド車である。なぜこのような点に開発過程で気がついていないのか不思議だ。Fun to drive が「不安とドライブ」に聞こえてくる。
少なくとも車を減速し止める動作になる時には、アクセルから足をいったん離すことを義務づける動作になるよう車を設計すべきである。トヨタのハイブリッド車は、この視点で当方にとっては欠陥車のように思えたので、営業マンに「これでは走る棺桶だ」と皮肉を伝えている。
ジュークに試乗し感動したのは、安い車なのにオートマチック車でありながらマニュアルモードが付いている。実は、これまでオートマチック車に乗りながら、エンジンブレーキをかけるのに不便をしていた。
ODスイッチを切って減速してから、オートマチックレバーを一段下げる、という面倒な動作である(だから進化の過程で、技術者が「止まる」機能を軽視しているとみなした。どうしてエンジンブレーキをかけるのに複雑な機構にしたのか不思議だ。)。自動車を止めるのにかなりの手順を踏んでおり、オートマチック車=不便な車という認識だった。しかし、この不便が身についた結果、車の運転時には「止まる」動作を間違えない習慣が身についた。車を止めるときには、絶対に足がアクセルペダルから外れ、ブレーキペダルに足が添えられている習慣だ。
ちなみに、ジュークの4駆にはマニュアルモードがついており、しかも7速である。こまめにエンジンブレーキを動作させるのだが、この時足はアクセルから自然にはなれる。ハイブリッド車や電気自動車は、その「止まる」動作について少し研究をする必要があるのではないか。
プリウスで暴走事故が多いのは、「止まる」動作について「走る」動作と明確に区別をした日産車のように工夫されていない点にある、と試乗した体験から思っている(素人が感じたのだから欠陥構造と言ってもよいかもしれない)。だから年寄りはハイブリッド車の運転を「絶対に」やめる「べき」である。ハイブリッド車は年寄りにとって「棺桶」ではなく、「走る」動作と「止める」動作を間違える可能性が高い「走る凶器」となりうる。
(注)もし、「止まる」動作を自動ですべて行うならば、車が止まらないことによる事故の責任は100%自動車メーカーになる。おそらくこのようなリスクのある車を自動車メーカーは販売しないだろう。リーフでは、「止まる」動作について、アクセルから足を外すことを求めている。「止まる」動作についてハイブリッド車の様な中途半端な自動化は、運転者の「止まる」動作に対して感度を落とす危険性を生み出す。安全な車とは、運転者が動作を間違えることなく車を止められるようにした車だ。少なくとも昔のマニュアル車はそのように設計されていた。すなわち、一般路の走行では、いきなりブレーキを踏むとエンストを起こし、必ず車は止まった。今車を設計するならば、ブレーキは足の操作で行い、加減速は手で行うメカニズムの車が理想ではないか。30年前のプレリュードXXには、ハンドルにアクセルスイッチが付いており、これで加速できた。加減速を足で行う必要はあるのか?左足ブレーキというアイデアもあるが、踏み込む動作が共通なので危険である。ブレーキを足で踏みこむ動作にしたならば、アクセルはそれと異なる動作にすることは、今の電子化された車で容易ではないか。電気自動車で1ペダルを実現できたのでハイブリッド車でも1ペダルは可能だと思う。同じ動作でペダルだけが異なる現在のハイブリッド車の仕組みは、認知機能の衰えた老人でなくても踏み間違える危険性がある。アクセルから足を外す動作を人間に要求するような機構にカイゼンすべきである。
カテゴリー : 一般
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