シミュレーションプログラムを作成しながら学ぶPython入門


<概要>

 技術開発において、現象を科学の方法でとらえることが20世紀に重要視されたが、21世紀となってもすべての現象を形式知で記述できたわけではない。そこでAIとビッグデータを活用し、回帰や予測、分類による特徴抽出で新たな知を模索する、マテリアルズインフォマティクスが2010年代に盛んになり、2017年にはアカデミアでデータサイエンスの講座設置ブームが起きた。


 ところで現象を数理モデルで記述し問題解決を図る方法は、厳密な意味で科学の方法ではない。例えば、レオロジーの問題をダッシュポットとバネのモデルで解く手法が1980年まで活発に研究されたが、緩和現象を説明できなかったので学会で議論されなくなっている。しかし、非科学的であっても現象の振る舞いを何らかの数理モデルを用いて考察を進める方法は、科学で未解明な現象に潜む問題についてモデルベースではあるが対策の予測ができるので技術開発を加速させる。


 本セミナーでは、絶縁体高分子に導電性微粒子を分散すると生じるパーコレーション転移を取り上げ、その閾値における物性変動を独自モデルによるプログラムでシミュレーションして、配合設計の問題を解決した事例を紹介する。そしてこのプログラミング過程を解説しながら、データサイエンス分野で今後も主流となるプログラミング言語Pythonの学習を進める。


 プログラミング言語の学び方として、すでに開発されたプログラムを基にスキルを身に着ける方法は、実戦的であるとともに効率が良い。


 また、導電性薄膜のインピーダンスが低周波領域で異常分散する現象について、典型的な数式による数理モデルで解析を行い、パーコレーションと関係していることを示す。この解析結果を用いて、「煙草の灰の吸着距離で帯電故障を評価する実技評価法」と相関する電気回路パラメーターを用いた帯電防止層の評価技術を紹介する。この評価技術の開発過程は非科学的であるにもかかわらず、開発成果のロバストを示すパラメータとしてタグチメソッドの基本機能として活用された。この事例からモデルベース開発手法について理解でき、コンピューターによる問題解決法を学びながらPythonのスキルを身に着けることが可能である。


 なお、本セミナーで使用するプログラムのエンジン部分を参加者には事前に無料配布し、セミナーの予習としてPythonプログラム開発環境構築を行い、動作確認していただく。 


<習得できるスキル>

Pythonプログラミングの初歩から中級レベルまでのスキル。

モデルベース開発の手法。

コンピューターを用いる問題解決法。

データサイエンスを活用した配合設計手法


<対象>

技術開発を担当する新入社員

技術系中堅社員

企業でPythonプログラムを提供する立場の方


<目次>

1.プログラミング言語概論

 1.1.コンピューターの仕組みとプログラミング言語

 1.2.プログラミング言語の歴史

 1.3.オブジェクト指向の考え方

 1.4.Pythonの普及

 1.5.技術者にとってPythonの優位性

 1.6.Pythonにできること


2.Pythonの導入

 2.1.要求マシンスペック

 2.2.事前学習にお勧めのサイト

 2.3.開発環境の準備

 2.4.基本用語と基本文法


3.シミュレーションを用いた問題解決法

 3.1.シミュレーションの役割

 3.2.パーコレーション転移

  3.2.1.事例:酸化スズゾルを用いた帯電防止層
   A.何が問題だったのか

   B.シミュレーションで分かったこと

   C.数値シミュレーションとコンピューターモデル実験

  3.2.2.事例:半導体無端ベルトの押出成形

   A.科学と技術

   B.Wパーコレーション転移制御


4.パーコレーション転移シミュレーションプログラム作成

 4.1.変数と組み込み型、配列

 4.2.条件分岐とループ

 4.3.関数

 4.4.クラスとオブジェクト指向プログラミング

 4.5.ファイル処理

 4.6.乱数について

 4.7.パーコレーション転移シミュレーションプログラム


5.まとめ

 5.1.データサイエンスとPython

 5.2.モデルベース開発


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