1.ゴム・プラスチック材料のトラブル解析と対策(概略編): 高分子材料で製造された製品のトラブル解決方法
当方のノウハウでさらに社会に貢献しようと形式知の部分について学会活動も始めました。経験知につきましては、トラブル解析の実務について概略をまとめてみましたのでご活用ください。今後高分子材料の寿命耐久性評価法や破壊に対する考え方についてもまとめる予定でいます。また、セミナーも皆さんのリクエストにより行ってゆきますのでご相談ください。
2024年3月現在、Amazonの電子書籍Kindle限定で販売中です。
価格は2,000円となっております。
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2.科学を超えて:オブジェクト指向とAIが拓く技術者・研究者のDX~科学と非科学の融合が創る未来~
デジタルトランスフォーメーション(以下DX)とは、「デジタルテクノロジーの使用により、ビジネスプロセス・文化・顧客体験を新たに創造(あるいは既存のそれを改良)して、変わり続けるビジネスや市場の要求を満たすプロセスである。」、とWikipediaに書かれている。さらに、2004年にエリック・ストルターマンが論文 “Information Technology and the Good Life.”の中で提唱し、「情報技術の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」とDXを定義した、と説明している。
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3.ポリマー混練活用ハンドブック
本書は従来の形式知による分配混合と分散混合による説明と異なり、マトリックスを形成するポリマーのレオロジーに着眼して解説しております。
これは、ゴム会社に入社しました時に樹脂補強ゴムを担当した3か月間に指導社員からご指導を受けた内容を基にまとめたものです。
40年以上前の経験知に最近の当方の経験知や、起業後8年間の活動で得た成果も内容として含んでおります。形式知として多くの教科書に書かれている内容と少し趣が異なりますが、実用的です。
データ駆動による難燃性樹脂の開発事例は、マテリアルインフォマティクスが話題になる前に実施されました。
パーコレーションの解説も数学による難解な解説ではなく、当方の作成したコンピュータシミュレーションプログラムによる計算結果を基に説明しています。
ゴムタイムス社から発売中で、価格は5,280円となっております。
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ゴム会社から写真会社へ転職して驚いたのは、実験ノートを企業が貸与し、人事異動など組織から出る時にはその実験ノートを職場に返却するシステムである。
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転職先は、新設された高分子技術の研究センターだったが、その前身となる職場の実験ノートを保管している倉庫があって、その管理は、当方の仕事になった。当方は左遷されるまでその仕事を行っていたが、カメラ会社との統合後この仕組みは無くなったようだ。
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豊橋の元カメラ会社の研究所へ単身赴任した時に、この仕組みについて上司であるセンター長に相談したら、今はファイルサーバーに実験データは保存され管理されているとの説明をされた。
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PPS半導体無端ベルトの押出成形開発で生み出された実験データは、ファイルサーバーに眠っていた。Excelで作成されていたので、誰でも閲覧できたが、残念ながら実験データ含め各種ファイルは個人のディレクトリーに保管されており、自由に閲覧できるはその個人の管理権限を有する管理職だけだった。
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但し、デザインレビューやその他プロジェクトで重要な会議の議事録などのファイルについては、担当者まで閲覧できるディレクトリーで管理されていた。
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ゆえに、単身赴任が決まってセンター長への挨拶が終わるや否や赴任先のファイルサーバー管理担当者にお願いし、半導体無端ベルト研究開発で使用されたExcelファイルすべてを特別な一時ディレクトリーへコピーを保存してもらった。
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そして、単身赴任前の2週間ですべての実験生データを閲覧したのだが、その時使用したのはVisualC#である。今ならば、Pythonで当時より簡単にできる。
カテゴリー : 一般
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ゴム会社新入社員時代のわずか3カ月間だったが、混練の神様のような指導社員は歴史に耐える技術指導を当方にしてくださったのかもしれない。
「研究報告書を課長から依頼されるまで書く必要はない」と、当方に言われた。また、週報は可能な限り、後日読んでも分かるように書け、実験生データは研究職をしている間は、大切に自分で管理し保存せよ、とも指導された。
この指導は、当時の研究所の書類管理の指針からは逆の方針に感じていたが、ホスファゼン変性ポリウレタンフォームの工場試作に成功した時に始末書を命じられ、その深い意味を理解した。
課長に命じられて1週間図書室に籠って始末書を何度も書きなおしていた。しかし、納得できないのは、納期を指示され休日まで返上し工場試作用のホスファゼン合成を一人で行っている。それにも関わらず、量産試作を成功させた報告書ではなく、始末書を命じられたのである。
また、それをどのような内容で書くべきなのかも説明されず、毎朝「書けたのか、書けたのか」、と責められた。最初に指示された時に始末書ではなく研究報告書を提出したら、「そんなものは後でもよいから、図書室で始末書を書いてこい」と言われている。
アメリカのオールコックや梶原鳴雪が研究論文を競っていた時代に、世界初のホスファゼン変性ポリウレタンフォームの量産試作に成功したのである。新入社員として配属された時に、本部長から当方に言われたミッションに対して短期間に成果をだした大切な研究報告書だったはずである。
しかし、本部長から急かされている、と毎朝課長に脅されて始末書を書きながら、世界で初めて工場試作に成功した研究報告書よりも大切な始末書とは何だろう、と頭が混乱した。
研究段階で低発煙の難燃剤として注目され始めた技術について世界初の成功をまとめた研究報告書よりも重要な始末書をどのような内容で書いたら良いのか、課長はその方針すら説明できず、「書けたのか」、と毎朝責めるだけである。
指導社員に質問しても、課長補佐格の方に相談しても、課長以外答えられない内容だという。人事部の同期に相談したら、新入社員時代は査定に影響しないから命じられたのではないか、という。
始末書の回議先に人事部も入っていたので、始末書の扱いがどうなったのか知らせてほしい、と同期にお願いしている。
後日談として、企画書を添付した始末書が人事部に回議された時には、企画書は無く、表紙だけが回議されていたそうだ。今ならば組織的なハラスメントである。
ただ、図書室に籠り始めた時に、美人の受付嬢がお茶を出してくれたり、図書室の隣のコンピューター部の女性スタッフが噂を聞き、最先端のコンピューター情報を知ることができる雑誌を紹介してくれたり、と始末書の噂がきっかけとなり幸運な出来事が続き、激しいハラスメントもそれほどの精神的負担にならなかった。
そもそも新入社員の2年間は査定も残業代もつかないので、力いっぱい仕事をするようにと、研修期間中人事部が言っていたことが嘘だったことをその後知ることになる。
この始末書騒動では、ホスファゼン変性ポリウレタンフォームの難燃挙動のふるまいをもとにして、論文で初めて知ったオブジェクト指向の練習を行いながら(注)企画したホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームの企画書を新入社員テーマとして提出し、課長に承認を受けて終結している。
しかし、今でも始末書を書かなければいけなかった理由や、なぜ当方が書かなければいけなかったのかという理由を理解できていないだけでなく、その課長は3年前に他界したので永遠の謎になった。
1週間仕事を止められて、図書室に籠って内容不明の始末書を書かされるような処分は、サラリーマンとして将来が危ぶまれる危機なのだが、無機材研に留学した年に受験した昇進試験で落とされるまで研究所という組織とそれを管理する本部長の恐怖をあまり深く考えなかった。
この時の本部長がまっとうな本部長に交代したときに、ホスファゼン変性ポリウレタンホームについて学会誌への投稿を命じられているが、この時に神様のような指導社員が言っていた「実験生データを自分で管理する」重要さに気がついた。
本来は企業資産となるべき実験生データは、当時の研究所ではゴミ扱いだった。週報や月報、研究報告書のように保管期限の設定は無かった。実験ノートの習慣もなかった。
神様のような指導社員は、3か月間毎日午前中をゴム技術に関する座学として当方を指導してくださったが、その時教材となっていたのは、指導社員の実験ノートとして使用されていた材料メーカーからサービスとして年末にもらっていた手帳のコピーだった。
実験の生データと、専門であるレオロジーのシミュレーション結果との対応を丁寧に解説してくださって、ゴムのクリープを説明できないダッシュポットとバネのモデルではあるが、ゴム技術者として身に着けておくべき重要な経験知として指導してくださった。
すなわち、実験の生データには、その実験を行った人の思想やスキルが詰まっている。これは知識労働者の時代では重要な企業資産であることをこの時知った。しかし、その重要な企業資産を個人で管理するという、今の情報管理の視点からお粗末な状態だった。
一方で、神様のような指導社員が無駄な書類の筆頭に挙げた研究報告書は、人事評価にも活用される重要書類だった。そして図書室の奥のスペースに大切に管理されていたが、誰も利用していないのでホコリを被っていた。
お茶を出してくれた美人の受付嬢に研究所の報告書について尋ねたところ、期末に研究報告書の件数をまとめる以上の指示を受けたことが無いという。
さらに、図書室の奥に保管していて誰も利用していないので、年末の大掃除で古いものを廃棄しようとしたら、永久保存書類と注意されたとのこと。
今、これがどのような管理状態か知らないが、転職して、研究報告書と生データの管理について企業で考え方が異なることを知った。
(注)課長にオブジェクト指向について書かれた英語論文の該当箇所を示しながら、始末書の説明をしていたが、かなり無理なこじつけである。しかし、それを熱心に聞いていたので、毎朝異なる英語論文片手に始末書の相談をしている。課長は始末書の内容について具体的に指示してくれないので、当方はオブジェクト指向で始末書のふるまいについて説明していた。そのふるまいの説明が課長の始末書に抱いているイメージと異なると書き直しとなる。書き直すときに、どのようなプロパティーと機能を始末書に持たせたらよいのか質問すると、それを考えるために図書室で調べろと課長は命じるだけである。今思い出すと、アンジャッシュの漫才のように思い出され、滑稽な光景であるが、当時は真剣だった。おそらく、課長は当方の説明を理解などしていなかったのだろうが、ホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームの企画が不思議にもまとまった。そして、それを新入社員テーマとしてまとめたい、という反省文を書いている。なぜ、これが始末書として承認され人事部まで回覧されたのか未だに謎である。
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昨日の話を再度書く。
量産まで半年しかない量産試作段階に、カオス混合プラントを立ち上げて、押出成形歩留まりの問題解決をしたいのだが、コンパウンドメーカーから混練条件等教えてもらえないどころか、そのための実験をやっている時間など無かった。
また、工場建設するためには、子会社社長の承認や、予算獲得のための役員への説明など様々な社内調整の手続きが必要で、そのために使用する実データが必要だった。
実はカオス混合プラント建設のために当方が新たに行ったのは、Wパーコレーション転移のシミュレーションだけで、このシミュレーションの検証にはデザインレビューにも使われなかった5年間誰も注目しなかったゴミデータを用いている。
デザインレビュー含め、社内調整用資料に用いた実験データには、当たり前だがゴミデータとは記載していない。過去の闇実験で得られたデータ、として説明し、その実験が行われた日時含め詳細なメタデータを添えている。
それら闇実験データがシミュレーション結果の正しさを説明している、とプレゼンテーションを行ったので、新たな押出成形実験は不要だった。
すなわち、5年間誰も注目しなかったゴミデータが記載されたExcelフィルが、コンパウンド工場建設の承認を得るために重要だった。これは、技術が進歩してファイルサーバーでデータ管理している成果であるが、ファイルサーバー登場前には大切な企業資産が捨てられていたことに多くの人は気がついていない。
こうして歩留まりが10%前後しかなかった問題を100%にする成果を出しているのだが、注目していただきたいのは、過去のデザインレビューとか月報とかの組織で承認されたデータなどすべて無視して過去の実験生データだけで成果を出していることである(注)。
これは、科学の時代ゆえに起きている問題だが、この点については後日のべる。おそらくもう少しAIが進化し、研究開発プロセスに浸透すると誰もが気がつく問題である。50年近く前にゴム会社で3か月間ご指導いただいた当方の指導社員は気がつかれていた。まさに神様である。
(注)プレゼンテーションでどのような説明を行ったのか、想像していただきたい。ここでは書きにくい内容である。また、その後当方が無名の中国ローカルコンパウンドメーカーと環境対応樹脂について開発できたのかもご理解いただけるかもしれない。コンパウンドの品質問題で困っておられる方は、コンパウンドメーカー含め、弊社へご相談ください。
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不思議に思ったのは、5年間のExcelファイルにパーコレーションというフレーズが一度も用いられていなかったことである。コンパウンドメーカーとの議事録をC#プログラムで検索しても見つからなかった。
また、コンパウンドメーカーの混練の説明にはカオス混合というフレーズや伸長流動というフレーズも用いられていなかった。
導電性微粒子を絶縁体高分子に分散して半導体材料を設計するときに、パーコレーション転移の制御を行うことは、1990年代に当方が日本化学会で講演してから常識になっている、と思っていたが、高分子技術では国内トップクラスの企業にも注目されていなかった事実に愕然とした。
カオス混合については、ゴム会社で防振ゴム用樹脂補強ゴムの開発を担当した3か月間に指導社員から知識と技術を伝授されていた。
さらに宿題として二軸混練機で実現する方法のアイデアをライフワークとするように言われていた(これは指導社員がロール混練に夢中になっていた当方に笑いながら命じられたことである(参考))ので、30年近くあれこれと暇なときに考えていた。
5年間の半導体無端ベルトの実験生データや多数の会議の議事録をC#で作成したプログラムで解析し、コンパウンドメーカーとの共同開発でパーコレーション転移の議論がなされていなかったことや、混練技術について分散混合と分配混合による議論しかなされていなかったことを理解できた。
すなわち、5年間に考えられるすべての策が検討されたわけでなく、重要なパーコレーション転移の制御技術やカオス混合技術についてコンパウンドメーカーの技術者含め知らなかった可能性が高く(注)、量産試作段階に問題解決できる確信を得た。
そこで、混練技術の経験がある若手技術者を中途採用し、定年前の技能員を一人加え、カオス混合プラント立ち上げプロジェクトチームを編成し、コンパウンドメーカーの許可も得て、ライン立ち上げに着手した。
すでに量産試作段階だったので、ライン建設はじめ様々な業務について、関係部署や経営の許可を得る必要があった。それらは、上司であるセンター長が全て対応してくださって、当方は中古機を集めてラインを立ち上げことに専念できた。
但しQMSの制約から、配合の変更は不可能であり、QMSに登録されている場所でのコンパウンド生産もQMSの変更作業などに時間がかかるので難しかった。
運よく静岡にQMS未登録の子会社があり、そこの敷地でコンパウンドラインを立ち上げると、コンパウンドを外部購入する量産段階のサプライチェーンを変更しなくてもよいことを品質保証部長から教えていただいた。
一番問題となったのは、コンパウンド技術である。コンパウンドメーカーはコンパウンディング条件を教えてくれなかった。そこで粘弾性測定実験を行い、混練条件を推定した。
カオス混合方法は、新入社員時代に出された宿題を思考実験で解決していたので、それを実戦で使えるかどうか確認するだけだった。幸運だったのは、5年間のデザインレビューには使用されていなかった、実験生データに答えのメタデータが幾つか思考実験の答えと一致していた。
すなわち、成形後の不良品ベルトを集めて再練りし、押出成形を行った実験では、半導体無端ベルトの面内抵抗変動が小さくなっていた。
さらに、不良品ベルトの押出条件その他のメタデータとサンプルが残っていたので、解析や分析を少し行い、Wパーコレーション転移の制御シミュレーションを実証するデータとすることができた(データの捏造ではない。未制御状態のWパーコレーション転移をしているサンプルを見つけたのである。そのサンプルではTgが一つしか観察されなかった。単身赴任前のあいさつで出張した時に、これを現場で観察していた話を以前この欄に書いている。)。
すなわち、カオス混合のコンパウンドライン設計のためにコンパウンディング条件を確認する実験は、粘弾性試験以外行っていない。組織内の検討会でも用いられなかった5年間のExcelファイルに残っていたゴミデータから情報を拾い集め、カオス混合ライン建設のためのデザインレビューを行っている。
(注)2005年にカオス混合の説明をコンパウンドメーカーに行っている。その結果、当方のビジョンを説明する前に勝手に工場建ててみろ、となったのだが、不思議なのは、その3年後から10件近くカオス混合技術についてこのメーカーから特許が公開されている。
(参考)今の時代は、年上の社員が若い社員をからかうと問題にされるが、昔はいじめやハラスメントは常識で、1990年頃まで他人のFDをいたずらして実験を妨害していても事件とされなかった。また、業務中に休日ゴルフに備えクラブを振り回して天井の蛍光灯を壊した**は今ならばセクハラ上司と言われるような行為があった、と女性指導社員から笑い話として教えられた。誠実さの欠けた上司でも耐えなければいけない、新入社員はコミュニケーション能力以上に強いメンタルが要求された時代だった。ゴム会社の上司の葬儀に参列した時に、同僚にもなっていない人が、「若い時にイジメて悪かった」と頭を下げてきた。当方は多くの人にいじめられていたので、その方のいじめなど忘れていたが、それがきっかけで忘れていた知識を思い出した。セクハラやパワハラが良かったと肯定しているのではない。優しく経験知を教えてくれる人などいなかった。それゆえ、学ぶ方も必死にならなければいけない時代だった。学びのために神経をすり減らしていた時代と言えるのかもしれない。
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研究開発途中の設備導入などで行われるデザインレビューの報告書では、残課題があっても順調に実験が推移してきたようにまとめられていた。そのようにまとめられていたので、5年間テーマを続けることができたのだろう。
また、デザインレビューのデータは、探せばそれに対応した実験生データが見つかったので、報告書のデータが捏造ではないこともわかった。ただ報告書には、歩留まりなどの細かいメタデータの記載は無かった。
驚いたのは高級複合プリンターへ展開する前に、低コストカラーレーザープリンター用にこの技術は一度量産段階で活用されていた。その時には、押出成形後に面内抵抗を均一化にするための工程を設けて、押出成形の歩留まりが落ちる問題を解決し、量産していた。
その後、この面内抵抗を均一化する工程を省くため、配合を見直し、補正工程が無くても面内抵抗の変動を制御できる技術のデザインレビューがなされていた。
ただし、このデザインレビューでは、抵抗変動を配合でどのように問題解決したかが議論されていたが、その結果どれだけの歩留まりが実現されたのかといった議論が欠落していた。
欠落していた、というのは正しくないのかもしれない。そもそも成形歩留まりが悪いのは、コンパウンドに問題があり新たな配合のコンパウンド技術を開発しなければいけない、と注記されていた。
この注記には、コンパウンドメーカーが世界的な一流企業だったので、それを簡単に解決できるようなコメントも付けられていた。
ところが、単身赴任して最初のこの企業との打ち合わせで、コンパウンドは1年以上前に開発が完了したことを確認しているのでこれ以上コンパウンドメーカーでは配合検討しない、と言われている。
それだけではなく、素人の当方が勝手に工場でも建てて、量産までに同じ配合でコンパウンドを供給してみたらどうか、と親切に言ってくれた。そこで、この提案を活かし3カ月でカオス混合の量産ラインを立ち上げた。
このラインは、20年以上安定にコンパウンドを供給し続け現在も稼働している。ラインは稼働しているが、20年も経つと技術の伝承が途切れ、おかしなことをやっていると風の便りが最近届いた。
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5年以上の半導体無単ベルト押出成形技術開発で生み出されたExcelファイルは、10000以上ファイルサーバーに眠っていた。これらのコピーを専用のディレクトリーに集め、専用に作成したC#プログラムにより実験で得られた生データ(以下実験生データ)と会議用にまとめられたデータとに分けた。
驚くべきことに、半分以上が実験生データを基にして加工されたデータだった。実験生データをコンパウンドのロットごとに分類整理したところ、奇妙なことに気が付いた。
3割のロットについて、重複して成形実験が行われていたのだ。この3割の実験生データを集めてさらに解析したところ、大別して3通りの実験が行われていたことが分かった。
実際の実験では3通り以上だったかもしれないが、C#でプログラムを作成し、解析した結果が3通りだった。そこで3通りに分類し、ファイル数を数えたところ、そこに規則性が見られなかった。
どのような実験が行われたのか、一つのロットについて、実際のExcelファイルの中身を比較したところ、「仕様から大きく外れた成形体が得られたので、成形を中断」とコメントが書かれていた。
ただし、1000本成形を行って、得られた半導体ベルトを再度粉砕して混練しなおし、実験を行っているケースもあった。
このように、実験生データのファイル数において精査したところ、1.成形されたベルトを回収して粉砕、ペレタイズして再度押出成形したケース、2.押出成形を中断し、後日押出成形をやり直したケース、3.複数のロットを混ぜて押出成形したケースなど、外部から購入されたコンパウンドをそのまま実験していないケースが見つかった。
担当者に尋ねたところ、コンパウンドが高価なので、成形条件検討用に再利用した実験を行っていたことなどを説明してくれたが、これらは参考データとして処理され、その後の会議用データには使われていなかった。
1万件以上のExcelファイルをC#でプログラムしたファイル分類ツールで、とにかく全部を読み切ったところ、デザインレビューの報告書に記載されたデータはチャンピオンデータである可能性が高く、歩留まりは開発当初には問題となっていたことが分かった。
しかし、押出条件の調整で半導体無端ベルトの周方向における抵抗ばらつきが大きく変動させることができたので、抵抗がばらつき始めたら押出条件を変更して対応できるだろうという見通しで開発が進められた。
すなわち、半導体ベルトの面内抵抗均一化という問題は5年間放置されてきて、一度も押出成形で歩留まりを70%以上達成したことがなかった。量産移行のデザインレビューでは、歩留まり向上策が重要課題とされたが、量産試作段階で簡単に解決できる問題ではないことに誰も気がついていなかったようだ。
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20年ほど前に単身赴任して担当した複合プリンター用中間転写ベルトの量産試作立上テーマは、半年後に歩留まりを70%にするだけの仕事というのが周囲の認識だった。
世界でも著名な一流材料メーカーとの5年に及ぶ共同開発でコンパウンドは問題ないという認識だった。当方は過去5年間の実験データを整理して、コンパウンド技術が未完成であることをセンター長に示したが、周囲の納得が得られる科学的なデータでは示すことができなかった。
これは、今でもコンパウンドの品質問題を科学の方法で満足に解決できないので、20年前ならば当然のことだった。科学的な否定証明は可能だが、それでコンパウンドの品質問題を解決できるわけではない。
電気粘性流体の否定証明を京大出身の博士をリーダーに大阪大学博士や東大修士など高学歴の研究者を揃えて1年間否定証明を行ったような無駄な時間は無かった。
これは、高分子材料で成形技術を担当している人ならば公知のことである。それでは、コンパウンドの品質問題をどのように解決しているのか。これは、あたかもユークリッド幾何学のごとく行う。
すなわち、問題解決できたコンパウンドを提示することで解決しており、成形プロセスにおける品質問題と問題解決できたコンパウンドとの関係は、風が吹けば桶屋が儲かるような論理展開で納得する慣習である。
この時、品質問題検討のために行われたすべての実験データが使われるわけではない。うまく品質問題を説明できる実験データだけが、報告書に記載されて残ってゆく。
換言すれば、うまく説明できなかった実験データは、その場で廃棄されるのが現状である。この問題に気がつかれている方は、どれだけいるのであろうか。
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研究開発における実験の効率化において、設備や装置のLA化が進んでも十分にDXされたとは言い難い。それらは、ただ省人化されたにすぎず、研究開発期間の短縮化に結び付いていない。
科学的に実験を進める限り、実験にかかる時間は、コンピューターの導入によっても思ったほど短くならない。
以前この欄でコンパウンド工場を3カ月で建設した話を書いているが、社内のQMSに従い、デザインレビューも所定の回数だけでなく、工場建設や量産移行に至る手続きもフル実装しての成果である。
コンパウンド技術があっても、工場を新しく建てるならば、短くても1年半はかかる。当然社内に疑惑の目を向ける人物も出てくる。たまたまゴム会社から転職してきた若手がいて、当方の進め方の問題をセンター長に報告したので、当方はセンター長への説明のための余分な仕事が増えた。
センター長とは阿吽の呼吸で進めようと合意していたのだが、やはり疑惑の提言があれば、会議を開いて進捗チェックを行わなければいけない。
疑惑はカオス混合機に対してだった。研究データが無いのに作り始めている、というのが、その中身だが、それに対して、PPS/6ナイロンが相溶したデータなど示して、科学的にありえない現象が起きているので、経験知で行うより仕方がないことを説明している。
そして、清水の舞台から飛び降りる覚悟で一発勝負で作成した(実際には1発勝負ではなく試行錯誤のデータがあった)設備で相溶が起きていることを示す実験データを示して、若手にも無理やり納得していただいた。
もっとも説得力があったデータは、できたばかりのカオス混合装置を用いたコンパウンドで押出成形を行うと歩留まりが100%となった現場の生産管理結果である。
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企画から量産移行まで、どのように研究開発を運営するかは、20世紀に散々議論されてきて、StageーGate法(以下SG法)が多くの会社で定着したようだ。
SG法を採用していない企業でも、量産移行の段階や、企画から研究開発に移行する段階で何らかのチェックを行うことは、SG法が無い時代でも行われていた。
すなわち、研究開発プロセスの全体管理についてその方法は、これまで検討され、アジャイル開発という方法までソフトウェア以外の分野でも行われるようになり、フロントローディングが一般的になってきた。
企画段階で、まず企画通りの商品ができるのかどうか、あるいは研究開発段階で障害となる事項は、など、研究開発を成功させる工夫は一般的となった。(まだこの段階に至ってない企業はご相談ください。)
今DXの進展で実用的なAIが登場し、企画段階で従来の検索作業に代わり活用されるようになったが、研究開発の現場で行われる実験についてDXは未だ不十分である。
ベイズ最適化の手法も試されるようになったが、実験データの扱いについて未だにExcelが主役である企業は多い。
Excel活用の問題は、実験を行っているその時に便利であるが、実験データの整理が行われ、SG法のGate段階までExcelで何とか管理できても、その後の再活用では苦労することを理解されている管理職は少ないのではないか。
管理職になれば、部下が全てデータ整理を行ってくれるので、整理された結果を見ているだけで良い。ただし、この姿勢に潜む問題点に多くの管理者は気がついていない。
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イノベーションを引き起こす研究開発プロセスでは、まずそのシーズが存在することを確認し、確認されたシーズをもとに、非科学的でもよいから、結果をまず出すことが重要である。
このようなプロセスは、ノーベル賞を受賞した研究でも採用されている。iPS細胞の研究では、24個の遺伝子を経験知から選び、そのすべての遺伝子を細胞に取り込ませて初期化が起きることを確認している。
その後、24個の遺伝子から1本取り除いた23個の組で初期化が起きるかどうか検討し、4個の遺伝子の組で細胞の初期化ができることを示した。
この話は、山中博士がTVで語っていたが、科学の禁じ手であるあみだくじプロセスを研究開発で採用し、博士はノーベル賞を受賞されたのである。
このiPS発見の研究開発プロセスはもっと注目されるべきだろう。残念ながら、あみだくじプロセスをその後山中博士から直接聞くことは無くなった。
研究開発プロセスを科学的に厳密に行うべき、という思想は20世紀の遺物となったようだ。最近はマテリアルズインフォマティクスも常識となり、ベイズ統計も実験に採用され始めた。
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