2012.09/07 酸化スズゾルの帯電防止技術から学んだこと(2)
タグチメソッド(以下TM)は、汎用的な技術開発ツールです。化学的見地から出した最適条件とTMで得られました最適条件が異なった、という体験を昨日書きましたが、タグチメソッドの実験ではこのような科学的推定との差異が生じることがあります。パーコレーションは、化学的因子以外に物理的因子にも支配される現象ですから、化学的因子だけで最適化していたなら当然だ、と今回の場合は納得できますが、TMから得られる結果に納得できないときも稀にあります。
このような科学的視点あるいは感覚からのずれが、実験結果に現れたりするので、TMを積極的に使わない同僚も見かけたりしました。しかし、TMは、技術開発のツールとわりきって研究開発で使用すべきと思っています。そして、TMの結果が予期せぬ結果であったならば、TMを疑うのではなく、実験計画あるいは科学的知識を疑うべきです。
酸化スズゾルを用いたPETフィルムの帯電防止加工技術開発では、TMを何度も使いました。田口先生はL18を推奨され、L9やL8のような小さな実験計画についてあまりよいお顔をされませんでしたが、開発初期の暗中模索状態の時には、いきなりL18を用いるよりも、L9やL8を使って開発スピードをあげるほうがよいように思っています。L9やL8を何度も使っていると重要な制御因子が見えてきます。そして仕上げにL18を使用すると、予想通りの実験結果が得られます。
技術的な経験知が充分蓄積された状態では、いきなりL18を用いていましたが、酸化スズゾル関係の技術開発の初期には、このように小さな実験計画を用いて、科学的知識との差異を実験結果と比較しながら進めました。パーコレーションの制御因子が複雑だったからです。初期のTMの結果には戸惑いましたが、別途モデル実験を組み、TMから導かれた制御因子の動きを確認したこともあります。研究開発の進め方として、技術開発を行ってから研究を後追いで進めるスタイルができあがりましたが、この方法は、あたかも「刑事コロンボ」というTV番組のシナリオのようです。この時の研究成果は日本化学会年会などで発表し、当時の部下の一人は講演賞を受賞しております。
TMの実験結果に対し、このような科学的検証を加えながら進めた結果、TMは、科学的考察から気がつかない因子の動きを教えてくれる便利なツールという印象を持つに至りました。そして、TMで得られた因子の動きから研究テーマを設定し、それを検証すると新たな科学的知識を獲得することができました。
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カテゴリー : 高分子
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