活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2024.03/09 ゴム・樹脂のトラブル解析

ゴムや樹脂のトラブル解析に、熱分析技術は不可欠である。TGAやDSC、TMAと並んだ文字を見て、すぐに測定法やデータが思い浮かぶようになりたい。


特に実務でこれらの材料の品質管理をされている方は、自分で測定ができるようにしておくとよい。使用頻度としてTMAは他の熱分析法よりも低くなるが、持っているといざという時に役立つ。


注意点として、JISやISOにはDSCを20℃/minで測定するように書いてあるが、TGAを同じ速度で計測すると、一部の情報を見ることができなくなる。TGAは10℃/min以下で測定したい。


困るのは昇温速度が異なると、変化温度の位置が変わるところである。ゆえに、熱分析はすべて10℃/minで計測し比較するようにしたい。


ゴムや樹脂のトラブル解析の大半は熱分析でその原因が見えてくるので、熱分析法を身に着けていると、対策を早く取れる。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

pagetop

2024.01/30 燃料ポンプの故障

デンソーなどによると、燃料を吸い上げるための「インペラ」(樹脂製羽根車)という部品を作る金型を変更したところ、樹脂の密度が低いものが生産されてしまったという。広報担当者は「製造後、車両に搭載するまでの環境なども複雑に絡んでいるとみており、複数の要因についてさらに調査している」と話した。  これまで7回のリコールを届け出たホンダの分析によると、樹脂密度が低いインペラが長期間倉庫に置かれるなどして、車両に搭載されるまでの間に表面が乾いてしまい、樹脂が収縮することで細かな亀裂が入ってしまうものがあるという。  (1月27日版朝日新聞デジタル記事より抜粋)


ホンダ車のリコールに関する記事で、1月27日に原因が細かく記載された記事を見つけた。おそらく樹脂はPPSだろうと推測され、燃料ポンプのインペラーについては、東レが特許を取得していた(10年間特許年金が支払われたが年金不払いで権利消滅)のを見つけた。


朝日新聞デジタルとこの東レ特許を読むと、トラブルの原因が見えてくる。2月度(昨日の本欄参照)に高分子のトラブルに関するセミナーを開催予定ですのでご参加ください。少し解説いたします。


また、本セミナーにつきましては、3月にゴムタイムズ社で、4月に技術情報協会でも開催されます。弊社で開催されますセミナーは若干お得な価格設定にしておりますので是非ご利用ください。  

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

pagetop

2023.12/14 高分子材料の破壊と劣化寿命

表題に関して日刊工業新聞主催のWEBセミナーが1月に開催されます。弊社にお申込みいただければ割引サービスいたしますのでお問い合わせください。

https://corp.nikkan.co.jp/seminars/view/6917


高分子材料の破壊につきましては、セラミックスや金属と異なりトランスサイエンスであり、他の材料では行われている非破壊検査も困難な状況です。


本セミナーでは事例により、高分子の破壊と耐久劣化の問題について、現象の解説だけでなく品質管理の手法や解析方法を解説いたします。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

pagetop

2023.10/19 Na二次電池

EV出遅れ日本が叫ばれ続けているが、もうすぐ4年ぶりのモーターショーである。今年から

Japan Mobility Show 2023 というそうだ。



EV用電池としてはLi二次電池が主流だが、水素燃料電池やNa二次電池も可能性がある。後者について日本メーカーはあまり関心が無いようだが、弊社は10年ほど前から細々と研究を続けている。


Li二次電池について1991年にソニーが商品化した話が有名だが、1986年にカナダの会社が、1987年にはブリヂストンがLi二次電池を商品化して販売している。そしてブリヂストンはその成果で日本化学会技術賞を受賞している。


電池分野について気になるのは、多数派の見解に流される傾向が強く、商品化の歴史についても誤った記事が多い点である。Naイオン二次電池についても当方が数社訪問し、技術者と懇談しても起電力差から将来性のない技術として頭から否定されてきた。


しかし、2015年にフランスで汎用Naイオン二次電池が発売され、あっという間にその生産の中心は中国となっている。コロナ禍前に驚いた状況となっていたが、日本ではそれでも関心を示さない。


それどころか今は全固体電池の実用化が本命とばかりに全固体電池開発競争となっている。確かにこのような先端技術は、とにかく先端を走り切ることが一つの勝利の方法だが、もう一つ先端ではないが長所のある技術について使いこなす開発も勝利の方法である。


LiとNaの標準電極電位は、約0.3VLiの方が高く、その結果Na二次電池の起電力等の性能はLi二次電池を越えることはできない。ゆえに電池開発者はこれを根拠にNa二次電池の未来を閉ざした考え方をする傾向にある。


しかし、Na二次電池がLi二次電池よりも満充電の時間が半減することが最近分かってきた。また、LiよりNaは地球上に豊富に存在しコストも安い。そのようになってくると、Na二次電池の使いこなし技術の可能性に対する期待が大きくなる。


詳しくは弊社に問い合わせていただきたいが、Na二次電池とLi二次電池とを組み合わせて蓄電デバイスを組み立てると、充電時間の短い蓄電デバイスを組み立てることが可能となる。


科学の視点では、標準電極電位がLiより0.3V低いNaで二次電池を組み上げてもLi二次電池を凌ぐことができないので面白くないかもしれないが、技術の視点で見るとNa二次電池の未来はまだ明るい。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料

pagetop

2023.09/22 新規ポリマーアロイ(6)

PPSへ可塑剤や他のポリマーを分散すると、その添加量に応じてTgが変化する。例えば6ナイロンを添加すると、6ナイロンのTgは上がり、PPSのTgは下がる。


すなわち、ポリマーの場合には2種類のTgが観測され、カオス混合により両者は相溶して一つのTgとなるのだが、PPSのTgは相溶により10℃前後下がる。


相溶は、非晶質相だけで起きるので、Tgが下がる欠点はあるが、PPSの靭性改善には良い方法であり、例えばPPSフィルムの場合に6ナイロンがただ添加されただけの場合のMITは3000前後であるが、これが6ナイロンの相溶したフィルムでは20000以上に改善される。


脆いと言われるPPSだが、ここまでMITが改善されると高速プリンターの動的部品である中間転写ベルトへ利用できるようになる。


PPSの改善効果を狙って退職後ナノポリスで研究をしているのだが、このTgを下げないで物性改善できる添加剤を10年ほど前に開発している。


低分子の添加では、低分子のTgは観察されないので、低分子の添加によりPPSのTgが下がる現象だけが観察される。しかし、10年前に開発されたPH01の添加では、なんとPH01の添加量を増やしてもPPSのTgは変化しない。


すなわちPPSの耐熱性を阻害しないで、その靭性を改善できる添加剤である。PH01は低分子ではないが、このような物性を分子設計されたオリゴマーである。詳細は弊社へ問い合わせていただきたいが、興味深いのは力学物性以外の改善効果もナノポリスから最近報告された。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

pagetop

2023.09/20 新規ポリマーアロイ(5)

昨日微妙なニュースが飛び込んできた。当方はコロナ禍前の2019年までナノポリスへ出かけては、学生やローカルメーカーの指導をしてきたが、その中に1社PPSコンパウンドを事業としている会社があった。


そこの総経理から中国EVメーカーが使用するPPSコンパウンドについて、全EVメーカーへのPPSコンパウンド納入に成功したという連絡が入った。すなわち中国のEVメーカーで生産される製品に使用されるPPS部品は、当方が指導した会社のコンパウンドになったという。


理由は、世界のどのメーカーよりも高品質だからだそうだ。タグチメソッドを導入し開発したのだからロバストが高いのは当然だが、他社では実現できない品質が達成されている、と自慢していた。


特にMAO処理では、高い品質効果が確認されているという。これは今連載で説明しているが、カオス混合の寄与が高いと思っている。


そのほかに、データサイエンスで解析して得たある知見をコンパウンディングに用いているが、これは科学では説明できない現象(注)を活用している。


科学を重視というよりも科学パラノイアに近い技術者には理解しがたい技術でコンパウンドを生産しているので、他社ではリバースエンジニアリングが難しい。


いろいろ感謝された後、10月に来てほしいと言われたが、現在の日中関係を思い、回答を差し控えた。ナノポリスで指導していた技術については、当方の著書にすべて書いてあり、日本で公開済みであるが、著書の売り上げは芳しくない。弊社へご注文いただければ、送料サービスでお送りいたします。


また、タグチメソッドはじめデータサイエンスについては、セミナー活動を通じ、当方のノウハウを公開している。中国や台湾でもセミナーをたまに実施しているが、集客は日本と比較にならないほど盛況で悩ましい問題だと思っている。


日本でも当方のセミナーに多くの人に参加していただきたいと願っている。今週末の難燃化技術セミナーでも50年近くのノウハウとこの10年の成果やデータサイエンスを用いた開発事例を公開する。また、ディープラーニングについても入門程度の解説を行い、難燃化技術とマテリアルズインフォマティクスについて理解できるよう準備してる。


(注)ほとんどの混練技術に関する形式知の説明では、分配混合と分散混合の概念が用いられている。この概念では理解できない現象が混練で起きている。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

pagetop

2023.09/19 新規ポリマーアロイ(4)

PPSは結晶化しやすい樹脂で、力学物性に影響が出るほど球晶が大きくなる。例えば力学物性測定用に射出成形されたPPSを200℃で1時間ほど放置すると、引張強度は低下する。


これをPPSの劣化と勘違いしてはいけない。球晶が成長したために靭性が低下し、強度が低下したのである。再度粉砕して射出成形すれば強度は復活するのでPPSの分子が断裂したわけではない。


PH01という新たなPPS添加剤を開発した。この添加剤は、カオス混合によりPPSに相溶するが、二軸混練機だけで混練したのでは相溶しない。


PH01を7%添加したPPSをカオス混合しコンパウンドAを製造した。このAを射出成形し、200℃1時間放置しても強度低下しない。6時間放置しても強度はそのままである。


ところが、PH01を同様の添加率で通常の二軸混練機だけで製造したコンパウンドBでは、200℃1時間の放置で強度低下する射出成型体しかできない。


AとBを化学分析しただけでは、その差異は不明である。すなわちリバースエンジニアリングで解明できない射出成形体を製造できる技術ができたのである。


これは中国ナノポリスで行った研究の成果で国内の某社で実用化されている。特許も出願されているので興味のあるかたは確認していただきたい。もちろん弊社へ問い合わせていただいても構わない。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

pagetop

2023.09/16 新規ポリマーアロイ(3)

PPSと6ナイロンはカオス混合により相溶する。これはフローリー・ハギンズ理論から説明できない現象であるが混練技術を工夫すれば起きるのである。


この実験のヒントは、東工大で行われたPPSと4,6ナイロンの相溶現象におけるその場観察である。すなわち、PPSと4,6ナイロンを二枚のガラス円板に挟み、それぞれ反対方向に回転させて剪断流動を発生する。


300℃近くになると円板の周辺部分が透明になってくる現象が観察された。すなわち、温度と剪断力でPPSと4,6ナイロンが相溶することを世界で初めて実証した扇沢グループの実験である。


この研究があまり注目されていないのはもったいないことである。この研究成果を思考実験により展開するとカオス混合装置が生まれる。そして4,6ナイロン以外のナイロンでも相溶するのではないかという妄想が生まれる。


この妄想が目の前で起きると感動に変わるが、当方の部下は当方を信じていなかったので腰を抜かした。当方は妄想で十分に理解していたので感動しただけであるが、彼はキャという悲鳴とともに腰を抜かしたのである。


PPSと6ナイロンの混練されて透明な樹脂液として二軸混練機の吐出口から流れている光景は、それくらい驚くべき光景なのだが、フローリー・ハギンズ理論の問題を理解しておれば感動の光景となる。


6ナイロン以外に12ナイロンとか数種類ナイロンをPPSとともに混練したがいずれも透明な樹脂液となった。面白いのはこの後である。


ストランドとして回収したサンプルを机の中に保管し、在職中こっそりと眺めるのが楽しみとなったが、5年ほど透明だった。2011年3月11日に最終講演が15時から予定されていたのでサンプルを準備していたが、ぐらっと来た。


その後忘れていたが、ストランドとして回収後のサンプルを数年後に見つけたら真っ白くなっていた。すなわち少しずつスピノーダル分解し、白くなったのである。白濁したが、ストランドの柔軟性は失われていなかった。これには腰を抜かしそうになった。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

pagetop

2023.09/14 新規ポリマーアロイ(2)

同一配合で異なる物性のコンパウンドをプロセス設計により作り分ける、これができない技術者は新材料開発能力が低い、と言わざるを得ない。


また、配合と物性は1:1に対応すべき、と某国家プロジェクトの目標に書かれていたようなことを信じている技術者はもっと材料技術について勉強すべきである。


PPS/6ナイロン/カーボンを二軸混練機で常識的な混練をしている限り、押出成形で半導体ベルトの歩留まりが100%となるコンパウンドを製造することは不可能である。


力学物性を犠牲にすれば、二軸混練機を二回用いることで、電気抵抗の安定したコンパウンドを製造可能である。例えば6ナイロン相にカーボンを分散し、それをPPSと混練すると得られる。


しかし、カーボンの分散したナイロン相のドメインが硬いので、そのようなコンパウンドで製造した無端ベルトは紙のような靭性のベルトとなる。


力学物性も電気物性も両方目標物性を満たしたコンパウンドを製造するためには、現在のところカオス混合しかない。すなわち、カーボンの凝集相が6ナイロンの相溶したPPSに分散した高次構造を有するコンパウンドなら電気物性も力学物性もその品質が良好な半導体無端ベルトを押出成形できるようになる。


ただし、PPSと6ナイロンのχは大きいので、これはフローリー・ハギンズの理論に反する、と考えた方は優秀である。カオス混合は、科学の形式知に反するような現象が発生するトランスサイエンスの混練方法である。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

pagetop

2023.09/13 新規ポリマーアロイ(1)

早期退職を決意したとたんに難しい仕事が舞い込んできた。配合を変えずに半導体無端ベルトの押出成形歩留まりを10倍にする仕事である。


某国家プロジェクトの目標として、配合と物性が1:1に相関し、などと間違ったことが書かれていたが、もしこれが形式知となるならば、この仕事の解は無い。


しかし、無機材料でも有機材料でも配合と物性は、1:1で対応しないことの方が多い。ゆえに国家プロジェクトの目標とされたのだろうが、これを1:1で対応させようとするセンスでは、新材料の開発など難しい。


しかし、そのような感覚のテーマに数億円の予算が毎年ついてプロジェクトが進められている日本の研究開発においてその任にある人は、弊社のセミナーで少し勉強した方が良い。


配合が同一でも高分子材料ではコンパウンディングプロセスが異なれば、物性は変化する。これは常識であり、それゆえ新たなプロセシング技術の研究は、いつの時代でも求められている。


PPS/6ナイロン/カーボンの単純な組成で半導体コンパウンドを製造するときに、少なくとも2種類の全く異なる高次構造のコンパウンドを作り分けることが可能だ。


技を磨けばこの単純な組成で3種類以上の高次構造を創り分けることができる。負の誘電率を有するコンパウンドまで製造できた、と書くとウソだという人がいるかもしれないが、電気技術者にコンパウンドの評価をお願いしていたら、彼が見つけてくれたのである。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

pagetop