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2024.10/05 コンパウンドのばらつき

加硫ゴムの一般的混練プロセスは、バッチ式である。タイヤの部材では、バンバリーとロール混練により、コンパウンドを仕上げ、加硫プロセスで成形と加硫を行う。

樹脂のコンパウンドは、二軸混練機を用いて連続的に行われる。ゆえに、加硫ゴムのコンパウンドに比較すると、ばらつき因子が増えるだけでなくばらつきそのものも大きくなる。

両者の原材料において、高分子成分そのものもばらつく。よく知られているように、高分子は多成分系であり、多分散系と言われている。すなわち、合成高分子は、分子量分布を持っている。

分子量が異なれば、本来は異なる成分となる。また、その分子量分布も単純なものから複雑なものまで、合成条件により様々なので、多分散系となる。

さらに、ポリマーアロイでは、混合した成分数に応じてばらつき因子は増加する。すなわち、コンパウンドのばらつき因子とその偏差は、高分子ゆえの複雑さとコンパウンディングプロセスの履歴の影響を受け、様々に変化する。

このことを正しく理解している技術者は少ない。なぜなら、このような複雑系の研究開発を行うためにはタグチメソッドをはじめとする、複雑系を扱う手法で研究を進めなければいけないが、研究開発の現場でタグチメソッドの普及率は未だに低い。

50年近く前から、このような分野における研究開発手法について研究と実践を行ってきたので、ご興味のあるかたは、お問い合わせください。一部は学会発表など行っています。

カテゴリー : 一般 高分子

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2024.10/04 成形トラブルと混練

射出成形では、事前に成形条件を検討しても、量産時にトラブルが発生する。トラブルの原因はいろいろあるが、混練のばらつきによる場合が多いことを知らない人がいる。


射出成形について研究していたある学者に、射出成形という学問の目標は何か、と伺ったら、どのようなコンパウンドでも射出成型できる技術を創り出すことだ、とすごい答えをしてくださった。


この答えのどこがすごいのかというと、明らかに不可能な目標だからである。また、企業の射出成形担当の職人に聞いても同様の回答をされたので、それは間違っている、と正している。


コンパウンド起因でトラブルが起きているのに、時間をかけて射出成形条件を量産段階で検討されたのでは、費用の無駄使いである。


金型温度のばらつきやシリンダー温度のばらつき、湿度のばらつきでも射出成形のトラブルは発生する。それで射出成形プロセスでは、温度や湿度を管理している。


それらの管理を充分行っても、射出成型プロセスではエラーが発生する場合がある。それはコンパウンドが大きくばらついているからである。


コンパウンドのばらつきは、コンパウンドの組成に依存する。例えばPC/ABSのような複雑なポリマーアロイでは、ばらつきやすく、射出成形でエラーを発生しやすい。


射出成形条件を検討しても絶対に解消できないエラーにフィルミングあるいはテープ剥離と呼ばれているトラブルがある。これは、成形体に粘着テープを貼り付けると、一部が薄膜としてはがれるエラーである。


ひどい時には、金型を汚染し、毎回金型の洗浄を行わなければいけない状態になる。これは、混練が不十分なために組成が不均一になっていて発生している。詳細は弊社に問い合わせていただきたい。

カテゴリー : 一般 高分子

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2024.10/02 リサイクル材の強度

2022年に新法が施行され、リサイクル材の研究開発が活発になっている。市販されている再生材のカタログを見ると、再生材の含有率が記載されているが、100%リサイクル材のコンパウンドを見かけない。


PETボトルのボトルtoボトルのリサイクルが日本で始まったが、中国では10年以上前から行われていた。当時、日本で回収されたPETボトルの大切な用途だった。日本からkg単価40円以下で販売されていた。


さて、リサイクル材100%のコンパウンドが何故販売されていないのか。これは、リサイクル材の力学物性が劣るためであるが、それは混練プロセスに二軸混練機を使用しているからである。


二軸混練機に当方の発明したカオス混合機を取り付けると再生材100%でも、そこそこの力学物性のコンパウンドを製造することが可能だ。


数年前の日本の学者の論文も公開されているので、ぜひ問い合わせていただきたい。但し、その学者の論文には当方の発明品とは書かれていない。


また、この論文には、カオス混合機を取り付けたときの強度改善機構を図で説明しているが、学者にしては、いい加減な図である。今回中国で行われた再生材の国際会議では、小生の考察をご披露しているが、多くの人に納得していただいた。


原因は二軸混練機の本質的な構造にあるのだが、これについてゴムタイムズ社から上梓された当方の著書に説明しているのでご一読願いたい。

カテゴリー : 一般 高分子

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2024.09/21 再生樹脂の力学物性

2022年に施行された法律の効果で、再生樹脂の価格が上がっている。来週広州で再生樹脂に関する国際会議が開催され、その招待講演者に選ばれたので、最新情報を整理していて、その価格にびっくりしている。


バージン材と変わらない価格である。もっとも再生樹脂の生産では、バージン材と異なり生産量の調節を自由自在にできるわけではない。


ケミカルリサイクルも見直され、新たな発想による提案が出てきているが、廃材の収集が律速段階のようだ。中国では20年ほど前から廃材樹脂の再利用が始まっており、再生材ビジネスという視点で見ると日本よりも先行している。


ケミカルリサイクルの検討は行われていないので、廃材をそのまま再利用する方法となるが、汎用樹脂で問題となるのが、成形体の力学物性と外観である。


リサイクル材100%で射出成形を行うと、ほとんどの場合に力学物性が悪い成形体となるのでバージン材を混ぜたりして力学物性を調節したりする。


この原因についてよく言われるのは、再生材の分子量低下であるが、それよりも再生材がバージン材よりも混練しにくいことが知られていない。


換言すれば、二軸混練機にカオス混合装置を取り付けると同一配合でも力学物性が改善される。これが知られていないだけでなく、怪しげなカオス混合装置類似のダイを取り付けて独自技術と主張しているアカデミアの先生がいるから困る。少し特許を勉強してほしい。

カテゴリー : 一般 高分子

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2024.09/11 食品用トレイのリサイクル

PETボトルのB2Bリサイクルは、サントリーと協栄産業が中心になり実用化された。今食品トレイのT2Tが話題になっている。


ところがトレイで問題になるのは、PETボトルのように同一素材でトレイが生産されていない。聞きかじりで申し訳ないが、プラスチックトレイ廃材の量はPETボトル約70万トンより多く85万トンらしい。


その40%は、PETだが、PSも40%ほどあり、10%がPPで残り10%がその他樹脂という内訳である。正確な数字は確かめていただきたいが、年をとっても関心のある数値は記憶している。


特に今月末再生樹脂の国際会議に招待講演者として呼ばれているので、必死でこのあたりの数値を確認してる。


さて、プラスチックトレイは、透明なトレイとそれ以外の白色や着色されたものなどさまざまである。すなわち、リサイクルにおいて透明トレイの選別はできそうだが、その他の色物は難しそうである。


トレイの材質を統一するモノマテも一つの考え方であるが、PETボトルと異なり、食品トレイでは加熱その他の目的に合わせる必要からPPなども活用されているのである。材質の統一は難しいだろう。


仮に透明トレイをPETに統一できたとしても、他の有色トレイはPETとしない方が選別が容易となる。すなわちリサイクルを考えたときに、選別技術を考慮するとすべてモノマテが良いとは限らないのだ。


なんだかんだで食品用トレイのリサイクルは、PETボトルほど容易ではなさそうだが、T2Tは、PETボトルで実現した手順で行えばよさそうであることは見えている(明日に続く)。

カテゴリー : 一般 高分子

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2024.09/06 燃焼時の高分子

高分子の燃焼において高分子試料で起きている現象は酸化だけではない。熱による溶融、熱による分子の断裂やラジカル発生、緩和など様々なことが発生する。


燃焼試験において、これらの変化が劣化させるように作用する場合もあれば、良い方向に作用する場合もある。例えば熱により変形が生じた場合に、ULーV試験では異常燃焼を誘起することもあり、たいていは悪い方向に働く。


実火災では、高分子材料がどのように火源と対峙するのか、その予測は困難であり、それで高分子材料の用途ごとに難燃規格が決まっているのだが、材料メーカーの立場で困るのは、それが成形体を対象としている規格であることだ。


すなわち、材料だけで難燃化規格の合格を保証することができない。難燃剤に至っては添加量の問題もあり、それが難燃剤であることを仕様に示すのは難しいはずである。


しかし、難燃剤として使用された実績があると、それを難燃剤として販売しているのが実情である。ここで問題が出てくるのは、リンやハロゲン系化合物以外で難燃剤として販売する場合である。


例えば、水酸化アルミニウムは、稀に30%以下の添加で、高分子を難燃化できたりする。これは他のフィラーとの交互効果が効いていたりする場合であるが、この事例から難燃剤として仕様に書くのはどうかと思う。


水酸化アルミニウムは、50wt%以上添加しなければ多くの高分子で難燃効果を発揮しない。これだけの添加量になってくると、成形体の燃焼時に高分子の変化に影響を与える。


良い方向に効果を発揮しているケースが多いので、水酸化アルミニウムは難燃剤としても知られるようになったのだが、その難燃化機構は、水の揮発による冷却効果として説明されたりしている。


ならば水酸化マグネシウムや酸化スズゾルも効果があるだろうと実験をすると、水酸化アルミニウムほどの効果が出ない場合もあれば、水酸化アルミニウムより少ない添加量で効果が出たりする。


40年以上前、高分子の熱による変化に着目し、これらリンやハロゲンを含まない化合物について、難燃効果を調べた経験があるが、仮説設定して実験を行うと、皆否定証明の結果となった。科学に対して大きな疑問を持つようになった原因の一つ。

カテゴリー : 一般 高分子

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2024.09/05 高分子再生材の強度

2022年に再生材とバイオポリマー促進に関する法律が施行され、今月広州では再生材に関する国際会議が開催されるという。その招待講演者に選ばれたので、改めて文献調査などを行ったが驚いた。


某大学の先生が当方のカオス混合類似の装置を使いながら、その先生の発明のようなことを書いている。この分野で真っ先に引用しなければいけないウトラッキーの文献さえも引用していない。


さらに、二軸混練機だけでは再生材の強度は低いが、その先生の発明による装置を使うと強度が上がるという論文をWEBでも堂々と公開しているが、その強度アップの原因に関する考察が間違っている。


論文は著名な雑誌ではないので、調査も不十分ないいかげんな論文でも掲載しているのだろうけれど、日本のアカデミアはここまでレベルが下がったのか、と愕然としている。


一応大学教授らしいが問題だと思っている。誹謗中傷ではない。やはりアカデミアから発表される論文は、先行技術など十分調査したうえでの研究論文であるべきと思っている。

カテゴリー : 一般 高分子

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2024.09/04 高分子の添加剤

高分子には様々な添加剤が添加され、コンパウンドとして提供されている。透明性が要求される光学用レンズ材料でさえも数種類の添加剤が入っている。


この添加剤の中には、目的が不明の場合もあることをご存知か。ゴム配合技術を新入社員の時に習ったが衝撃的なことを教えられた。何故添加しているのか不明の添加剤があるというのだ。


その添加材を入れなくても物性変化はないが、耐久寿命が変わるので、寿命に効いている、と言われているが、そのメカニズムが不明という。


ただし、その添加材を抜くと寿命試験で短くなる結果が得られるという。当方は不思議に思い、一度その添加材を抜いてみたところ、物性も耐久性も何も影響が出なかった。


しかし指導社員からコストダウンの目的でもない限り、抜かない方が良い、と言われた。理由は、現場でも知られており、その添加材が添加されていない配合は信頼度が低くなるかららしい。


同じような問題が写真会社に転職した時に発生した。エポキシ基を持った添加剤である。接着剤によく使われる分子構造であるが、発がん性のある化合物が多い。


これを廃止する企画をしたが、最初はゴム会社と同様の理由で没になった。そこで、多層塗布における接着について基礎研究を進め、各層の弾性率と応力分布の関係等基礎的事項について研究成果を積み重ね、この化合物が無くても十分な接着力を出せる手法を開発した。


その結果、この添加剤を抜くことができたのだが、これは、科学的に証明できたので周囲の理解が得られたのだが、大変な作業であった。

カテゴリー : 高分子

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2024.09/01 高分子の破壊

ある日突然高分子製品が壊れた経験は無いだろうか。例えば樹脂製のフックが壊れたり、パンツのゴム紐が伸びきった状態になっていたりする故障はクリープが関係している。


金属やセラミックスのクリープの多くは拡散クリープとして説明され、その寿命予測も実験室結果をうまく再現できる設計が可能だが、高分子のクリープ問題は悩ましい。


何故なら、科学で解明できていないからである。ただし、現象の幾つかは再現よく現れ、技術として問題を解くことが可能で、その解に沿って品質管理を行えば、品質問題を回避できる。


すなわち、トランスサイエンスとして扱う知識があれば、製品設計が可能と言える。もちろんこの時はロバスト設計が基本となり、タグチメソッドを使用する。


ゆえに高分子の破壊問題では、タグチメソッドが不可欠であるが、タグチメソッドをご存知ない方はお問い合わせください。Pythonのプログラム付でご指導するので、すぐに実験で活用できます。


タグチメソッドのセミナーにつきましては、「Pythonで学ぶタグチメソッド」をお勧めします。セミナーは1人でも開講いたしますのでお問い合わせください。複数受講の場合にはサービス価格でご提供いたします。

カテゴリー : 一般 高分子

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2024.08/29 正しい理解とは

高分子の難燃化技術は、トランスサイエンスの分野である。そもそも火災という現象そのものがトランスサイエンスである。燃焼をいくら管理して実験を行っても、それが非平衡で酸化が進行しているならばトランスサイエンスの現象であることを悟るべきだ。


未だ非平衡の現象を科学で解析できていない。そこを理解できていると、無重力状態における燃焼現象が地上と異なることに驚く必要はない。地上と異なるのは「当たり前」である。


地上では、自己消火性となる酸素濃度で可燃性の高分子を無重力状態で燃焼させると燃え続けたのでびっくりした、ということがニュースで報じられた。当方ならば驚かない。


宇宙での火災、とりわけ宇宙船の中の火災は人命にかかわるので重要な研究とばかりに、科学の研究を始めた学者がいるそうだが、センスが悪い。


もっとも、世間は高分子の難燃化技術について未だ正しい理解をしている人が少ないので、いかがわしいサイエンスショーでも「科学」と持ち上げるように、哀れみではなく称賛として見られるのだろう。


科学者と称する人は、自分が正しいと思い込んでいる人が多いように思う。科学的手順で答えを出せばそれは皆が科学として認めてくれる。


仮に無駄な答えでも無知な人から見れば宝物のように見えるのだろう。無駄な知識になっているだけなら良いが、時々間違った問題で正しい答えを出している場合もあるので困る。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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