2012.09/12 比旋光度
不謹慎ですが、指導社員O氏からレオロジーについて指導を受けている時に眠くなった話から、弊社の目標まで。
ゴ ム材料はダッシュポットとバネで表現できる、といきなり始まった講義は、新鮮でした。有機化合物であるゴム材料が機械の部品で表現できるのです。分子レベルで 考えるのではなくマクロの視点でとらえて高分子物性を理解するレオロジーは、おそらく当時の学問としてピークに到達していたのかもしれない。高分子物性のほとんどが、ダッシュポットとバネでモデル化でき、数値計算で解くことができる、というすばらしい成果が得られていたのです。
しかし、マックスウェルの方程式を解くあたりから気が遠くなり、量子化学の授業風景へタイムスリップしました。なぜか卒論実験している風景も出てきます。E体とZ体の作り分けに苦労したゲラニオール、光学異性体の話と布施明のシクラメンの香り(小椋佳作詞作曲のヒット曲、ゲラニオールはシクラメンの香りの成分)がごちゃまぜになり、比旋光度の式が出てきたところで目が覚めました。O氏は会議室にはいらっしゃらなくて、人情味あふれる文字で書かれた講義録が机の上に置いてありました。
翌日から講義ではなく、演習の毎日。地獄でした。しかし、習うより慣れろ、とはよく言ったもので、高分子の一次構造を考えずにマクロ領域から考える気持ち悪さのため理論は良く理解できないが、ゴムの高次構造をモデル化し式を立てるところまで、教えられたことはできるようになりました。そこまでできるようになって、O氏は、「おそらく、君が第一線で活躍する頃には、こんなことやってないだろうな」と申され、当時のレオロジーの考え方が高分子分野で破綻する可能性をレオロジーの最前線の情報とともにお話ししてくださいました。実際に2000年頃高分子のメソフェーズシミュレータ-OCTAが登場し、高分子の粘弾性については分子1本の挙動から積み上げる試みが現在なされています。
どのような分野でも似ているところがあると思いますが、目の前のテーマを解決するためには、直前まで蓄えられている知識や知恵を総動員することが求められます。その上で新しいことを創造してゆく活動が科学の研究であり、技術の開発だろうと思います。昔の人は良かった、覚えることが少なくて、というのは亡き母の口癖でしたが、覚えた知識が新しい成果のため無駄になる、と錯覚するぐらいに最近は進歩のスピードが早くなっています。単なる情報はゴミとなって捨てられる運命ですが、知識や知恵は整理されていればいつまで経っても役に立ちます。
弊社が現在出版しています、「高分子材料のツボ」セミナー、「電気化学の要点」セミナー、各種中国語入門書、問題解決の書籍などは、単なる情報では無く、目前のテーマを解決するために必要なスキル向上をめざす内容を目標にしています。学問に王道は無い、と言われますが、弊社がめざすところは、単なる学問の王道ではなく、技術から芸術まで新しいことを創造するための王道です。
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