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2012.09/28 高分子を混ぜる

混練の話につきまして過去にしておりますが、改めて高分子を混ぜる技術について。

 

混練機の中では、溶融した高分子で発生する剪断流動と伸張流動の2種の力により、分散が進行すると言われております。そして、分散効率の点では剪断流動が、分散粒径の点では伸張流動が有利とまで説明している教科書もあります。しかし、混練のこの説明は再度見直した方がよい、あるいは技術的に高分子を混ぜるとはどうすればよいか、を材料とハードウェアーの関係において改めて根本的に見直すべきではないか、と思っています。その結果新しい混練機が生まれるように思います。

 

硼酸エステル変性ポリウレタンフォームを商品化するために、何度も試作を繰り返しました。自分が発明した技術を現場で試作を行い、商品に仕上げるまで体験できたのですが、このとき、液状の原料を高速撹拌する装置に興味を持ちました。通常の高分子の混練装置の10倍以上の回転数で攪拌機は回転しています。実験室ではワンショット法と呼ばれる方法で、エマルジョンを混合する特殊な高速攪拌機を用い混合していましたが、これを実用化するときにはどのような混合方法を行うのか大変興味がありましたので、試作では率先して装置の準備や試作終了後の洗浄に参加させていただきました。技術を学ぶには、実際に現場で操作する、体育会系精神が一番近道です。

 

攪拌機の部分はノウハウの塊で特許出願を行っていない、と説明を受けました。単なるスクリューではなく、ブラシのような形状の攪拌機です。撹拌される原料の粘度が低いので、このような多数の羽根で剪断流動を起こすことができるのでしょう。また、羽根の大きさから実験室よりも攪拌時に発生している剪断速度は数倍速くなっていると思いました。発泡体のセルも小さく均一度が高いです。一番びっくりしましたのは、イソシアネート化合物とポリエーテルポリオールとの反応効率が2-3%向上している点です。実験室よりも実機の方が、撹拌性能が優れていたのです。

 

撹拌部分の形状から、攪拌時に発生しているのは明らかに剪断流動です。この装置で分子レベルの効率が上がっていますので、剪断流動には分散粒径に限界がある、という定説は、普遍的な真理ではなさそうです。剪断流動でも剪断速度を上げれば伸張流動と同じくナノ分散ができるはずではないかと当時推定しましたが、21世紀になり、(独)産業技術総合研究所で1000回転以上の回転数を発生する高速混練機が開発され、実験データが公開されました。その報告では、ナノ分散が達成されていますが、分子量低下も起きているとのことでした。また、残念ながら、大変大きなモーターを開発しなければいけないので、この装置を生産用にスケールアップすることは不可能です。

 

高速混練機は残念な結果でしたが、剪断速度を上げれば、伸張流動と同様に剪断流動でも分散粒径を小さくできることがわかりました。科学の世界では分子量低下の効果も議論する必要がありますが、技術の世界では、この実験結果やポリウレタンフォームの体験を組み合わせ、イメージし、実際に装置を工夫して実現できれば十分です。そして、剪断速度をあげ分子量低下を起こさない混合方法は、同じ頃開発に成功しています。「高分子材料のツボ」セミナーには、このほかにイタリアの学会で報告された混練方法なども紹介していますのでご興味のある方はご覧ください。

 

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カテゴリー : 高分子

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