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2012.10/01 会社の留学制度

入社して2年目に会社は創立50周年を迎え、CIが導入され、社名からタイヤが消えました。そして、非タイヤ部門を強化する方針が発表され、メカトロニクスと電池、ファインセラミックスの3分野を事業の柱とする戦略が発表されました。同時に50周年記念論文の募集(1980年)があり、私は有機無機複合材料から高純度セラミックスを合成し、それを基盤技術としてファインセラミックス市場に進出するシナリオを提案いたしました。この提案は、入選しませんでしたが、海外留学のチャンスを頂きました。

 

留学し学位を取得するのは一つの夢でしたので、このチャンスは夢実現につながる朗報でしたが、日本が先端を走っているファインセラミックスフィーバーの状況と会社の方針を考慮すると、留学先を日本とし会社の事業戦略に直結する研究テーマを選ぶべき、という思いが浮かび、アカデミアの先生3人に最良の留学先について相談いたしました。すると3人の先生方全員が研究環境の観点で無機材質研究所(現在の物質材料研究機構)を一番の留学先であると教えてくださいました。

 

しかし、無機材質研究所の留学では研究所に学位審査権が無いので学位は取れません。学位取得の容易さと会社の方針、そして会社が用意してくださいました海外留学先も含め悩みましたが、30年以上担当することになるであろうファインセラミックスの仕事を中心に考えを整理し、S人事部長とご相談しました。すると、無機材質研究所から留学許可が得られるならば、海外留学制度にとらわれる必要は無い、という見解を示され、研究所の上司にも調整してくださいました。

 

その後手続きを進め、無機材質研究所へ留学することになりましたが、当時国内の大学以外の研究機関への留学は全社の留学制度として前例が無く、海外へ毎年研究所から1名留学するのが常態化していましたので、研究所の同僚からは今回の国内留学が前例となったなら、海外へ留学しにくくなるのではないかとの批判も聞かれました。また、仕事中心ではなく学位取得と語学を成果として考えればよい、とアドバイスしてくださる先輩もいました。

 

会社に留学制度がある場合に、その目的の一つは人材育成ですが、それ以外は会社により様々と思います。研究所の上司からも柔軟に考えるように、ともアドバイスを頂きました。その後学位取得に苦労しましたから、当時の自分の判断が正しかったのかどうか悩むこともありましたが、無機材質研究所へ留学し、高純度SiCの新合成法を完成することができ、そしてその事業が現在も続けられていることを思いますと、海外留学と学位のチャンスを見送り、無機材質研究所を留学先に選びましたのは、正しかったのではないかと思っています。ただ、発明の成功により先行投資2億4000万円が決まり、高純度SiCの新合成法のパイロットプラントを建設することになり、3年間の留学予定が1年半になりましたのは誤算でした。

 

上司の説明による当時の全社留学制度は、語学留学が目的で、将来の海外派遣要員育成という目的があったようです。将来のキャリアプランとして社内ベンチャーを起業したい、という夢もございましたので、全社留学制度の趣旨どおりの留学でも良かったのかもしれません。しかし、SiC半導体の原料となる高純度SiCの新合成法のアイデア実現が、社業に貢献できる成果として具体的に見えておりましたので、無機材質研究所への留学を決意しました。また、当時の無機材質研究所は、ファインセラミックスフィーバーの中心研究機関で、セラミックスメーカーからのビジターが多く、留学先のSiC研究グループは、海外の留学生も含め満杯の状態でした。ところが小生のビジョンを理解してくださった猪股先生が田中無機材質研究所長と調整してくださり、受け入れてくださいました。さらに、田中所長は、留学の挨拶で訪問した会社幹部に、高純度SiCの用途が、パワー半導体やLED、半導体冶工具に広がり、将来一大マーケットが形成されるという説明をして、高純度SiCの研究の後押しをしてくださいました。この詳細は「なぜ当たり前のことしか浮かばないのか」(1)あるいは「問題は「結論」から考えろ!セミナー」(2)に紹介してあります。

 

(1)(2)は、クリックして頂くと、リンク先からサンプルを閲覧できます。

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