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2012.10/19 湘南台駅構内のバルーンアート

弊社は技術から芸術までを活動範囲にしておりますので、本日は芸術の話題を取り上げます。

小田急江ノ島線湘南台駅の地下通路に設置されたバルーンアートが、一部住民のクレームで撤去されることになったそうです。作品は、27、28日に開催される「藤沢市民まつり湘南台ファンタジア」を盛り上げようと実行委員会が、バルーンアートで実績のあるアーティストに制作を依頼した空間オブジェで、祭りの人気イベントで恒例のサンバパレードをイメージした作品に仕上げられていたようです。天井からつり下げられた直径数十センチ程度のバルーン50個には、女性の下着に見える手作りのサンバの衣装が着けられており、巨大な下半身型バルーンもセクシーな衣装をまとっている、と新聞記事には報じられておりました。

 

作者も合意されて撤去に至ったようですが、表現の自由には表現者の責任ならびにそれを許可した人の責任が伴うことを考えると、老若男女誰もが目にするところに、女性の下半身を見上げるような表現を許可した鉄道会社に問題があるように思います。明らかに女性の下半身を見上げるような表現は、その方面の趣味人以外の大半の日本民族にはそれを受け入れる精神構造にはなっていないことを考えるべきであった、と思います。

 

表現者は、表現の社会へ与える影響も考慮しなければなりません。たとえそれが感覚から生まれたもので斬新な表現として伝えたくても人類の幸福を損なうような表現(今回は不快感ですが)であればその時代の人類の許容できる芸術表現とはならないからです。表現者の責任とはそこまで考えた上で、自分の作品をどのように公開するのか決めなければなりません。表現の自由は大切な概念ですが、それは鑑賞者の存在を考えた時に表現を公開する場所に制約が加わるケースが出てくることを前提にしなければなりません。鑑賞者の幸福を奪う権利を表現者には与えられていないからです。その判断を表現者に求めることが難しい場合には、作品展示を許可する立場の責任は大きくなります。何の制限もない公共施設に展示される芸術作品については、作品展示を許可する立場の方が事前に厳格なチェックをすべきで、それは表現の自由をどのように考えるのかと言う議論とは異なる問題だと思います。

 

現場で作品を見ていないのに批判ばかり書いてしまい作者には申し訳ないですが、新聞に掲載された写真を見る限り、天井ではなく、床展示だったなら撤去までに至らなかったのではないか、と感じました。床では表現の意味が変わるので、あくまで見上げる位置の展示を希望と言うのであれば、鑑賞者の制限を加えられる場所に展示すべき作品と感じました。おそらく事前にデザインの打ち合わせがあったはずで、そこで誰も今回の事態を想定できなかったとしたならば、表現の自由よりも公共事業者として大きな問題があるように思います。

カテゴリー : 一般

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