活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2012.11/02 超微粒子の分散

パーコレーション転移は導電性微粒子を絶縁体である高分子に分散した時に観察される現象ですが、高分子に微粒子を「制御して」分散する技術は難易度が高いプロセシング技術です。この技術で微粒子のサイズが小さくなるとさらに難易度はあがります。パーコレーション転移は微粒子が凝集する傾向にあれば生じやすくなりますが、制御しなければ分散不良の凝集粒子として観察されることになります。

 

パーコレーション転移という現象は、微粒子とマトリックスの高分子との間に相互作用がなければ確率過程で生じますが、両者には相互作用が必ず存在するので、パーコレーション転移が高分子物性に影響を及ぼすのであれば制御技術を開発する必要があります。この時、微粒子サイズが小さくなれば、微粒子間の相互作用も強くなるので超微粒子を用いてパーコレーション転移を制御するには工夫が必要です。

 

超微粒子を高分子マトリックスに分散する時にパーコレーション転移が全く生じないようにする技術、すなわち超微粒子の凝集を防ぎ、1個づつの超微粒子が分離した状態を作り出す方法として、2種類の技術を開発しました。

 

一つは高純度SiCの合成で用いたリアクティブブレンドでもう一つはゾルをミセルに用いたラテックス重合技術です。前者は、高分子と超微粒子の組み合わせに制約がありますが、後者はゾルさえできれば超微粒子が凝集しない分散状態を作り出すことができます。生成物はラテックスですので薄膜の用途であればそのまま使用できます。バルクで使用するためにはスプレードライプロセスで水から分離することができますのでコストも抑えることが可能です。

 

ゾルをミセルに用いたラテックス重合技術は1994年にコニカで開発された技術で、2000年の学術雑誌にイギリスの研究者からゾルをミセルに用いたオイル分散の報告が世界初として発表されていますから、その6年前に本当の世界初の技術ができていたことになります。

 

面白いのは、2000年の高分子学会賞審査会でこの技術を出願した特許をもとに世界初として報告したら、審査員として出席していた某著名私大の先生が「だれでも合成できる」と一言言われました。その結果大した技術ではないと判断されたのでしょうか、落ちました。学会賞を受賞できませんでしたので技術の詳細を公開する機会を失いましたが、技術者は特許以外にも積極的に論文発表を行うべき、という反省をしております。

 

弊社では本記事の内容やコンサルティング業務を含め、電子メールでのご相談を無料で承っております。

こちら(当サイトのお問い合わせ)からご連絡ください。

カテゴリー : 高分子

pagetop