2012.11/09 セルロース
この10年環境指向で、ポリ乳酸のような天然高分子の実用化が活発だが、セルロースは、産業分野で古くから使われていた天然高分子です。例えば写真フィルムの支持体TACは、セルロースを酢酸で変性した高分子で、類似構造のDACも含め光学用フィルムの主役である。例えば液晶TVの偏光板や視野角拡大フィルム、位相差フィルムなどにも使用されている。
そのほかの実用化例として、パルプ・樹脂複合材料として自動車のボディーに使われたことがある。これは東ドイツで1990年頃まで約30年近く生産されたトラバントという車のボディーに使用されたのだが、環境対応として使用されたのではなくコストの問題からである。最近このような構造材料分野へパルプ樹脂複合材料が使用された例を聞かないが、環境対応樹脂として見直してもよいように思います。ポリ乳酸よりもコストの安価な樹脂ができます。また混練方法さえ選択すれば臭気の問題も解決できます。
パルプはセルロースの結晶性の繊維なので弾性率の低い樹脂と複合化すれば補強材として使用することができる。パルプの結晶性繊維で弾性率が高い、という性質は情報媒体の紙として身近に使用されている。またスピーカーのコーン紙では漉き込んで製造した形態から生まれる損失係数の高さを利用している。これはセルロースとプロセシングの組み合わせから生まれた機能性材料というとらえかたができ、高分子材料の機能性を設計するときに大きなヒントとなる実用例である。
特殊なセルロースとして海鞘やある種の乳酸菌が吐き出す長繊維形態の材料は複合材料として用いるときに少量で機能を発現できるので面白い材料である。菌から生まれたセルロースで身近な材料はナタデココである。このようにセルロースという高分子は、食品から構造材料、機能性材料として多分野で使用されている天然高分子の王様であるが、LCAの観点からは応用分野ごとに評価しなければ正しい環境材料かどうか怪しいところがあるので注意が必要である。
例えばTACフィルムはメチレンクロライドに溶解させてキャスト製膜して作られるので環境負荷が大きい。環境負荷を低減するために押出成形するアイデアもあり、特許が多数出願されている。しかしこの技術はセルロースという高分子の性質を熟知していないとスジ故障とかブツとかで悩まされる難易度の高い技術で素人には特許を書けても実用化は難しい。
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カテゴリー : 高分子
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