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2012.11/17 タバコの灰付着テストとインピーダンスの絶対値、パーコレーション転移

写真フィルムの帯電防止評価技術には表面比抵抗や電荷減衰などの電気的測定方法以外に様々な実技評価技術がある。しかし電気的測定方法と実技評価技術の間には相関が無いので製品開発では実技評価が欠かせない。1991年当時の電気的測定方法はすべて直流的であったので交流を用いた評価技術の開発を始めた。材料評価に交流を用いる技術は電気化学分野で1960年前後から行われ、誘電率の周波数分散に関する議論が等価回路を用いて行われていた。粘弾性のストークスモデルやマックスウェルモデルを用いた議論も当時岡小天先生らによりされているので研究の最前線のテーマだったのかもしれない。しかし、パーコレーション転移と誘電率の周波数分散あるいはインピーダンスの周波数分散との関係は1991年まで議論されていない。

 

一方フィルムの帯電防止評価技術に交流を導入したのは、特許情報からコニカが最初である。半年遅れでAGFAから等価回路を模した電極を用いて交流の共振点でフィルムの抵抗を決めるというトリッキーな技術が公開された。この特許が公開されたとき、コニカではすでにタグチメソッドの基本機能としてインピーダンスの絶対値を採用していた。インピーダンスの絶対値が実技評価との相関が高いので採用されたわけであるが、とりわけタバコの灰付着テストにおけるタバコの灰付着距離との相関は高かった。また、インピーダンスの絶対値のある値以上でタバコの灰が付着しなくなるので社内規格としても有用でありました。

 

しかし実技評価技術との関係よりもパーコレーション転移との関係はさらに面白く、表面比抵抗や体積固有抵抗の変化ではわかりにくいパーコレーション転移の閾値が鮮明になるという特徴があった。すなわち、導電性微粒子を絶縁体である高分子に添加していったときに、インピーダンスの絶対値は緩やかに上昇するが、パーコレーション転移の閾値では急激な変化を示す。抵抗因子だけでなく容量因子の情報も拾っているためであるが、この性質を用いると、表面比抵抗や体積固有抵抗ではわかりにくかった閾値の測定が可能になるので、パーコレーション転移の性質の研究に有用である。

 

例えば導電性微粒子の酸化スズゾルは、製造プロセスにエラーが発生すると僅かな凝集を生じ、構造粘性により僅かに粘度が上昇する。酸化スズゾルをラテックスに分散し塗膜にした時に、表面比抵抗で測定する限り、このエラーを検出できない。しかしインピーダンスの絶対値を用いると容易に検出できる。すなわちパーコレーション転移の閾値近辺で材料設計していた場合に、表面比抵抗では多少の構造変化を検出できないが、インピーダンスの絶対値では2ケタ以上の変化となって現れるので検出できることになる。このようなインピーダンスの絶対値とパーコレーション転移との関係は、誘電率でも同様に観察できる。

カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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