2012.11/24 傾斜機能粒子
電気粘性流体の開発を担当した25年前、3種類の複合粒子を開発した。電気粘性流体に使用される粒子は帯電しやすく放電しやすい二律背反の性質を有する粒子が必要で、このような材料は単体粒子では材料設計が難しく、どうしても複合材料として設計しなくてはならない。
傾斜機能粒子は、表面は絶縁体で、中心部分が半導体の粒子です。すなわち最表面のすぐ内側から中心部にかけて半導体領域で抵抗が低下している粒子です。単純に均一な抵抗を示す半導体粒子の表面に絶縁体を被覆した粒子を合成し、電気粘性効果を比較すると電気粘性効果がきわめて小さい。粒子の製造条件によりましてはほとんど電気粘性効果を示さないこともあります。
単純に半導体粒子の表面にシリカを付着しただけでは電気粘性効果が表れなかったので、半導体粒子の表面から内部にかけてシリカの濃度が変化している傾斜機能粒子を合成したところ大きな電気粘性効果を示した。すなわちシリカの濃度で絶縁体領域から半導体領域まで抵抗を調整することにより、帯電しやすく放電しやすい粒子ができました。
傾斜機能粒子が発明されたときにプロジェクトメンバーから驚きの声が上がった。当時このような材料は最先端の材料であり、それが企画から2日程度でできましたのでなおさらです。製造方法は極めて簡単で、フェノール樹脂粒子にエチルシリケートを含浸するとエチルシリケートがフェノール樹脂内部に加水分解しながら拡散するので、表面から内部にかけてシリカ濃度の変化したフェノール粒子ができる。このシリカ濃度が内部から中心部にかけて変化しているフェノール樹脂球を800℃以上で炭化すると、目的とする傾斜機能粒子ができる。傾斜組成についてはエチルシリケートの含浸時間を調節するだけで様々な粒子を合成できます。
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