2012.12/01 三酸化アンチモンの難燃性
三酸化アンチモンはハロゲン系難燃剤と併用して用いられて初めて難燃剤としての性能を発揮します。驚くべきことは、体積分率として数%程度の添加でよい点です。一方樹脂により組み合わせるハロゲン系難燃剤の種類や量については様々です。
例えばPPとPSでデカブロモディフェニルオキサイド(DBDPO)を用いる場合PPでは20vol%程度必要だがPSでは10vol%程度でよい。添加量が2倍異なります。PSはPPよりも炭化しやすいから、という説明も納得できますが定説となっている三酸化アンチモンの難燃化機構から考えますと、三酸化アンチモンの量が同じにもかかわらず、DBDPOだけ2倍量必要というのは不思議な現象です。
同じことがABSとPBTについても言えます。これらの樹脂ではテトラブロモビスフェノールA(TBA)が使用されますが、三酸化アンチモンが同程度にもかかわらず、やはりハロゲン化物の添加量は2倍程度異なります。
このあたりの考察が必ずしも十分ではありません。特許情報を見ましても同様の傾向があり、難燃剤の研究開発を始めてから不思議に思っていました。軟質ポリウレタンフォームの難燃化研究をスタートした時の比較対象は三酸化アンチモンと塩ビとの組み合わせの難燃化システムで、当時の主力商品でした。この比較サンプルで興味深かったのは、配合手順で、同一難燃性を得るのに必要な塩ビ粉の量が変化したことです。
三酸化アンチモンの分散状態に大きな差異は出ませんでしたが、塩ビ粉の分散状態が変化していました。塩ビ粉はそれ自身凝集しやすく軟質ポリウレタン中の凝集粒子の大きさに違いがありました。また分散粒径にも違いがあり分散が大きい場合には、塩ビ粉の量が多めになっていました。当時の結果はハロゲン化物の分散状態がその必要な添加量に影響を及ぼしている、という非常に理解しやすい結果でした。
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カテゴリー : 高分子
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