2012.12/06 SiCパワートランジスター
3.11以降経済状況以上にエネルギーに対する考え方が大きく変わりました。いろいろな変化がありますが、大きく目立った動きとしてLED電球の普及とSiCパワートランジスターの開発スピードが上がったことです。前者は今年度の電球の売り上げは200億円を軽く突破し、1個のの値段が20W球が300円前後までに下がりました。60W球相当品も600円代を狙って推移しています。後者は2005年頃にSiC-MOSFETが上市され、特許がそのころより大幅に増加して今日に至っております。すでに民生用のエアコンやステレオアンプに搭載され始め、一部ハイブリッド車にも搭載されています。
SiCの半導体分野への応用はブリヂストンが先行したが今はウェハーについてはクリー社が王者で新日鉄や日本インターなどと契約し、日本市場へ攻勢をかけています。新日鉄はブリヂストンと同時期にプラズマ法による高純度SiCの開発に成功したメーカーです。当時はエンジニアリング分野を中心としたセラミックスフィーバーが吹き荒れており、新日鉄は開発に成功した高純度SiCの常圧焼結技術開発に苦しんでいました。彼らが開発しました高純度SiCは超微粒子の為、グリーン成形体密度を上げられないのと表面が活性で酸化されやすいため常圧で焼結ができませんでした。ホットプレスでは、カーボン助剤だけで98%以上の密度まで上がりました。
特許動向を見ますとデンソーがクリー社よりも現実的な出願戦略で出願しており、おそらく実用化で先を走っている三菱電機やロームよりも先行しているのではないか、と思われます。デンソーは石油を作る藻の研究開発を進めている会社でもあり、同社の特許動向を見ますとCTOのセンスの良さが見え隠れします。今という時代に要求される技術のトレンドやツボを押さえた技術開発を行っています。おそらく技術開発マネジメントがうまくいっている日本では数少ない会社で、5年後が楽しみです。
SiCパワートランジスターは、Siパワートランジスターの限界から開発が始められ、先行したGaNパワートランジスターを抜く勢いで開発が進められている。GaNが先行しながらもSiCが伸びている理由には資源リスクの問題もあり、クラーク数の大きなSiを原料とするSiCの方が環境面でもコスト面でも将来有利とみられている。ウェハーの性能としてはGaNの方が優れていても、である。ただ放熱性の尺度である熱伝導率は、この分野の材料の中でSiCが一番高い。
SiCウェハー分野ではクリー社一人勝ちの状況ですが、新日鉄や住友金属、ブリヂストンはじめ国内勢の追い上げに期待したい。まだこれからが勝負の分野です。なお豊田中研はこの分野で隠れた技術集団ですが、特許出願状況を見ますとデンソーとの契約があるようです。この分野もknow who が重要で、クリー社を追い上げるためにはコラボレーションを考えなければいけないのかもしれません。クリー社は特許戦略を重視し巧みに共同開発契約を進めています。新日鉄とは技術面というよりも特許対策の要素が大きいように思われる。
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カテゴリー : 電気/電子材料
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