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2012.12/18 酸化スズの面白さ

高純度酸化スズ単結晶は絶縁体です。しかし、InやSbがドープされると透明導電体になります。ただ、Sbドープされた場合には若干青みを帯びた透明、Inは黄色みを帯びた透明です。InやSbのドープは半導体物性論から大変理解しやすい。しかし、Fをドープしても同等の導電性が得られ、こちらは色味もなく無色透明と特許に書かれています。

 

実際にFをドープした酸化スズを合成してみますと、ドープの効果が不明な結果となります。すなわち、Fをドープしなくとも酸素欠陥を多くして結晶性を落としてゆくと酸化スズに導電性が表れます。この事実に基づく最初の発明は特公昭35-6616で、非晶質酸化スズゾルを写真フィルムの帯電防止剤として使用した特許です。

 

非晶質酸化スズの導電性については、酸素欠陥の量と関係しているように思われますが、実験を行うと必ずしも酸素欠陥との相関が高くない。DSCやTGAを行うと300℃前後にわずかな水が失われる現象が観察される。酸化スズの中に水が含まれているのか調べてみると水の分子は観察されない。おそらくスズ酸の形式になっているのでしょう。

 

ならば、プロトン導電体として導電性が出ているはず、と活性化エネルギーを求めてみると1eVとなる。また、0℃近辺にわずかな変曲点が存在し、電子伝導性も疑われる。InやSbがドープされた酸化スズは電子伝導性であることが確定しているが、酸化スズゾルに含まれる粒子の公開された研究報告を探しているがまだ見つかっていない。おそらく酸化スズゾルの合成条件で物性が変化するので論文を書きにくいためと思われます。またある種の酸化スズゾルから取り出したゲルでは、エレクトロクロミズムも現れブルーになったのでびっくりした。公開された研究報告に書かれていない面白い現象が酸化スズには観察されます。来年酸化スズを用いた帯電防止層の電子セミナーを販売する予定を立てています。

 

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カテゴリー : 電気/電子材料

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