2013.01/19 弊社の問題解決法について<2>
探偵ホームズシリーズのほとんどの作品は、ワトソンを語り手としてベーカー街で始まり、そこへ依頼人が登場し、謎(問題)が提起されます。依頼人の説明が終わったところで、探偵ホームズとワトソンは、分析と調査に乗り出し、それが依頼人の持ち込んだ問題の解決へつながる、というパターンです。もし、最初のトライでうまくゆかない時には、ベーカー街の事務所に戻り、依頼人から再度話を聞くか推理をやり直します。
シャーロック・ホームズファン(シャーロッキアン)の好きな短編リストの上位に入る「赤髪組合」では、依頼人の相談内容が極めて不思議な相談であったため、正しい問題は他にあるのではないかと探偵ホームズは調査を進めます。しかし、それを発見した後、事件解決の準備のためワトソンと現場で別れますが、その後の待ち合わせ場所は、やはりベーカー街になっています。
すなわち探偵ホームズは、ベーカー街で問題設定し、分析的思考で推理を進め問題解決する、という現在普及している科学的問題解決方法の典型プロセスで事件を解決していきます。このような物語展開の中で、読者はワトソン役になり、探偵ホームズから提供される分析や調査の結果を基に謎を推理し考えることになります。探偵ホームズシリーズが現代でも愛読される理由は、このような一般的に用いられている科学的な問題解決パターンで話が進められている安心感と読者の「解く力」とのバランスが良いためでしょう。
探偵ホームズが、このような典型的な科学的問題解決法のパターンで事件を解決するのは、作者であるコナン・ドイルがロンドンで開業医として働いていたためと思います。すなわち作者の科学的教養の高さが、探偵ホームズに厳密な科学的論理思考をさせていたのだろうと思います。
ただし、探偵ホームズのあまりにも典型的な科学的論理思考ゆえに物語全体を平板にしているという批判があることも付け加えておきますが、物語で使われている彼の「考える技術」を行間から推理しますと、必ずしもその批判は正しくないように思います。最初に書きましたように短編集の物語展開はすべて同じパターンですが、「考える技術」を駆使している探偵ホームズの姿は、時々非科学的思考方法も飛び出す柔軟な頭脳の持ち主として描かれています。この探偵ホームズの姿を味わいながら物語を読みますと、必ずしも平板とは言えません。
(明日へ続く)
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