2013.01/27 弊社の問題解決法について<10>
探偵ホームズも刑事コロンボも主に活用している「考える技術」は、演繹的推論です。観察により集めた情報で推論を展開する点は共通しています。さらに非科学的な消去法や思考実験、経験に基づく勘もこの二人は使います。
しかし、演繹的推論を行う時に、探偵ホームズは分析的思考で考察を進め前向きの推論を行い、犯人の特定、事件解決に至りますが、刑事コロンボは、犯人を逮捕するためのアクションを考える逆向きの推論を展開する点が異なります。
探偵ホームズと刑事コロンボが事件解決の対決を行ったら、おそらく刑事コロンボが取りこぼしなく事件解決を行い、勝利すると思います。なぜなら、探偵ホームズの場合には前向きの推論でいくつもの可能性を考えることには長けていますが、その推論の展開は、必ず事件解決にたどり着くという保証が無いからです。一方刑事コロンボの場合には、必ず犯人から逆向きの推論を用いて、犯人逮捕に結びつくアクションを考えています。ですから犯人がいる事件ならば刑事コロンボは必ず犯人逮捕できることになります。
例えば、難事件と思われた「策謀の結末」を探偵ホームズが取り組んだ場合を想像してみます。殺人現場には、密売人の死体とテーブルから落ちたウィスキーのボトルがあるだけです。このボトルはテーブルから落ちた後、犯人が裏切り者に対する贈り物の気持ちを込めて死体の手元へ蹴って転がした状態です。この状態に込められた犯人のメッセージに気がつくかどうかが犯人逮捕の決め手となります。
さっそく、探偵ホームズは、絨毯についたシミからウィスキーのボトルが落ちたテーブルの位置を特定します。つぎにボトルがその場所から落ちた後、死体の手元へボトルが転がる場合を科学的に分析して推理します。ボトルが落ちた時の角度をいろいろ試しながら、死体の手元に転がるための条件を求めてゆきます。犯人がある意図をもって蹴とばした、などとは考えません。現場には、死体とウィスキーのボトルとの位置関係以外に、そのようなことを示す情報が無いからです。
刑事コロンボの場合は、あくまでも死体が中心です。死体とボトルの位置関係があまりにも良すぎることに気がつきます。すなわち、犯人がわざわざその位置にウィスキーのボトルをおいた、という推定をしております。この現場では、ボトルと死体が結論に相当します。刑事コロンボは、最初に探偵ホームズと同じようにテーブルからボトルを落として考えますが、ボトルの置かれた位置の不自然さに着目し、ボトルと死体を一つの結論という見方をして推理を展開します。このシーンについてドラマを見ていただきますと納得のゆく逆向きの推論が展開されています。
おそらく探偵ホームズは密売人が殺された時の面会者を推理することができず、事件を解決できなかった可能性があります。分析的思考を用いて前向きの推論を展開する方法では、途中の情報が得られなかった時に結論にたどり着けない危うさがあります。しかし、結論から逆向きの推論を行った場合には、結論にたどり着けるアクションがある限り、必ず事件を解決できます。
(明日へ続く)
連載の内容は弊社の電脳書店にて販売中の電子セミナーで、更に詳しく解説しております。
是非ご覧ください。
カテゴリー : 連載
pagetop