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2013.02/06 弊社の問題解決法について<20>

問題認識が大きくずれるケースとして、問題の存在について意見が分かれる場合について考えてみます。震災後に顕在化した問題以外に、平和な日々の生活でも細波のごとく多くの問題が発生します。水害の連想で安直ですが、1974年の多摩川水害から生まれた新聞小説「岸辺のアルバム」というTVドラマでは、不倫をしている主人公が偽りの笑顔で家族写真を撮るシーンがあり、それは平和な家庭において主人公以外誰も気が付いていない問題を表現する象徴的なシーンでした。

 

現実とあるべき姿に乖離が見えないなら、誰も問題の存在に気がつきません。ゆえに問題の存在に気がついた人は、まず現実とあるべき姿の認識を共有化するために、それぞれを見える化する作業が最初の重要な仕事になります。誰も問題に気がついていない段階で、問題だけを主張しても、他の人は現実とあるべき姿の乖離が見えないために、問題の存在そのものを理解できません。

 

原子力発電の安全神話はその典型的な例であり、科学的に検証したので事故は起きないという原発の専門家達による誤った現実認識と、発電コストが安価でCOを排出せず環境に優しい未来エネルギーというあるべき姿を国民が共有化したために、問題が見えなくなり福島原発の事故を引き起こした、と反省する必要があります。

 

原発につきましては、一部の学者やジャーナリストから警鐘が鳴らされておりました。チェルノブイリの事故以来数多くの問題が具体的に指摘されてきましたが、あるべき姿や現実がうまく伝わらず、問題が共有化されなかったため福島原発の事故に至りました。

 

福島原発の事故原因解明は現在も進められておりますが、今回の事故処理も含め発電コストの試算を行いますと火力発電よりも高くなるという結果も報道されました。さらに環境汚染や食の安全の破綻の状況なども見えてきました。これらの問題を抱える発電システムとしての原発を含めた将来のエネルギーについてあるべき姿が議論されるようになって、ようやく原発の問題を共有化できる下地が整いました。

 

このような問題以外に、福島原発は全電源喪失から回復までに1時間以上かかったという報告があります。電源車を慌てて手配したが、コネクターの形状が合わずに電源回復が遅れた現実やY所長はじめ現地の技術者が運転設備の構造を十分に理解していなかった現実も新聞報道されています。事故後の報道で次々に明らかになる原発の現実は、「安全でクリーンなエネルギー」というあるべき姿から日に日に乖離してゆきます。

 

 このように問題というものは、現実とあるべき姿の乖離が大きくなって初めてその存在が分かるものであり、問題を指摘してもその理解や共感が得られない時には、現実とあるべき姿の共有化から作業を進める必要があります。

                                  <明日へ続く>

カテゴリー : 連載

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