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2013.02/10 弊社の問題解決法について<24>

 それでは「考える技術」として日常の問題から科学の問題まで使用可能な新しい問題解決法を説明します。本書における問題を考えるという作業の意味は、「現実」が「あるべき姿」に改善されてゆく道筋を見いだすことと、その道筋を用いて「あるべき姿」に至る思考実験を行い問題解決のアイデアを検証し練り上げる作業までです。

 

 また、問題を解決するとは、「あるべき姿」を実現するために行動をおこし、成功することです。問題を考えるのも問題を解決するにも意志の力が必要です。すなわち、問題を考えるとは、すでにその段階から問題解決のステップがスタートしているのです。本書では、問題を考える時に必要となる発想力を引き出すための工夫を独自のK0チャートとK1チャートというツールで実現しています。

 

しかし、実際の問題解決では、ここで説明しているステップを段階的にすべて行う必要は無く、問題の規模に応じて途中のプロセスを省略することができます。ここで説明する各プロセスの良いところだけを取り出して、我流の「考える技術」を創りだすのもいいと思います。

 

ところで、すでに説明しましたように、問題解決の道筋は、問題の構造に影響を受けます。

 

問題の構造が単純で、課題が一つのときには、その課題が解決されれば、「現実」と「あるべき姿」の乖離は無くなります。しかし、通常の問題は複数の課題で構成されていたり、課題がさらに細かい課題で構成されていたりと問題の認識の仕方で変化します。また、課題を問題に転化できますので、問題が複数の問題で構成されている構造として認識することもできます。

 

問題を分析的思考で解決しようとした場合に、問題の構造の複雑さや課題が問題に転化する性質は分析結果に大きく影響するので大変困りますが、エージェント指向にも似た問題解決法では、問題の構造を自由に変化させて問題解決を進めますので、問題解決途中に「問題」に内在するこのような性質から影響をうけることはありません。

 

問題の構造を考えるにあたり、ここでは、問題が課題だけで構成された構造を持っていると仮定して系統図を作成してゆきます。しかし、この段階で通常行われるような、問題の構造の正確な全体像を表す系統図(ロジックツリーと呼ばれる)を作るわけではありません。叩き台程度でかまいませんから知識ベースを活用して、気楽に作ります。

 

これまでの問題解決法の中には、問題を分析する目的で系統図を用いる場合があります。本書でも問題の構造を系統図で表現する作業を行いますが、問題を分析するために系統図を使うわけではありません。問題に含まれる課題を知識に基づき整理し書き上げ、それをまとめるために系統図を書きます。

 

問題を分析する従来法との相違点は、問題に含まれるすべての課題を書き上げることに集中する必要はなく、アイデアをまとめる気分で気楽に作ればよい、と言う点です。自分たちの所有する知識ベースで考えられる課題だけで問題の構造を書き上げる作業を行います。

 

問題の構造を分析的思考に頼らず、保有している知識の範囲でまとめあげる点は、この問題解決法の特徴です。知識の範囲でまとめてゆきますので、完成前におおよその階層構造もあらかじめ推定できる長所があります。類推などにより思いつく課題だけで系統図を作成しますが、課題に漏れがあるかどうかという心配をする必要はありません。仮にこの段階の作業で課題を見落としても、この後の作業で、「あるべき姿」から逆向きの推論を行い見落とした課題を探索し追加してゆきますので大丈夫です。

 

また、この作業の後半において思考実験で使用するK1チャートを作成する時に、アクションの結果について有効であった場合と無効であった場合についてすべて書きあげる作業を行いますので、ここで仮に課題を挙げ忘れても思考の漏れが発生することはありません。

 

普及が始まっている科学的問題解決法USITでは、問題の構造を見えない世界として扱い分析的思考で探索してゆく手順で行われますが、高い能力が要求されます。しかし、ここで行う系統図作成作業と、逆向きの推論で行う「あるべき姿」から課題を見いだす作業は、分析的思考に必要な高い能力まで要求されません。実務で培われた知識と発想力があれば作業を完了できます。

 

                   <明日へつづく>

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