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2013.02/16 弊社の問題解決法について<30>

 K1チャートから選択された経路を使い、シナリオを作成して思考実験を行います。この時全体のシナリオについて行っても良いですが、一部分だけ抽出して行う方法もあります。あるいは、シナリオを幾つかに分割してそれぞれについて思考実験を行っても良いです。本問題解決法では、そのやり方に制限を加えません。大切なことは、「あるべき姿」実現の可能性について確信を得ることです。思考実験の良いところは、問題解決して得られた「あるべき姿」達成のシナリオについて自信と問題解決する力が湧いてくることです。このことは重要で、思考実験がイノベーションを引き起こす源動力にもなります。

 

技術者による思考実験ついては、E.S.ファーガソン著「技術屋の心願」に次のような表現があります。

 

「ある機械について考えるとき、一つの動的なプロセスをなす各段階を順次たどりながら推論を進めていけば、心の中でその機械を始動させることができる。」

 

この表現は、思考実験の特徴を象徴的に表しています。すなわち、これから開発しようとする新しい機械についてアイデアを練る時に、開発の対象となる動的なプロセスをイメージし、各段階の一つ一つを頭の中だけで組み立て、その動作を確認し、不具合を修正しながら新しいアイデアを生み出して機械を完成させてゆく、という空想を行えば、実際にモデルを組み立てなくとも新しい機械を発明できる、と彼は言っているのです。

 

この本の題名にある心眼とは、「思い起こされた現実のイメージと思い描いた工夫のイメージが存在する場所であり、信じられないほどの能力をもつ不思議な器官」、と説明されています。そして、ファーガソンは、心眼について、「本当の眼を通して入ってくるよりもずっと多くの情報を集めて解釈し、生涯にわたる感覚的情報―視覚、触角、筋力、内臓、聴覚、臭覚、味覚の情報―を集積して、相互につないで関係づける働きをする器官であり、その器官があるので、工学的知識の大部分は、視覚的な言語によって記録され伝達されている」、と述べています。

 

ここで、視覚的言語という表現は、実際に作られ伝承されてきた機械や建築物を意味しており、第二次世界大戦以後、工学の主流が数式的な関係に表現できない知識を敬遠する傾向にあるため、現場軽視と数式・計算偏重の現状に、警鐘を鳴らし、モノヅクリの根本について再考を促したいというのが彼の狙いのようです。

 

ファーガソンの主張は、思考実験についてなされたものではありませんが、その考え方は、思考実験というものがどのように行われれば、新しい技術を生み出す源動力になるかというヒントになります。例えば、思考実験に関係する工学の知識について、次のように説明しています。

 

「技術分野の設計者が用いる表向きの知識は、その主要部分が科学に由来しているとはいえ、科学ではない。これには、実験的証拠だけでなく材料やシステムについての経験的な観察に基づいた知識も含まれている。————(中略)—————-

工学的科学は、科学とは別個の抽象概念を数多く持つ点でも純粋科学と異なっている。これらの抽象概念は、技術上の問題を解析する時の枠組みとなるものである。」

 

すなわち、彼の考える工学の知識とは、科学ではない非科学の内容も含んだ経験的知識の体系を意味します。この経験的知識については個人差の出るところですが、1年以上技術開発の現場で仕事を行えば、思考実験の有効性は理解できると思います。思考実験により、頭の中の抽象概念が刺激され、成功の自信とともに新しいアイデアも出る可能性が高まります。

           <明日へ続く>

カテゴリー : 連載

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