2013.03/22 導電性微粒子分散系フィルムのインピーダンス
絶縁体高分子に導電性微粒子を分散し成形したフィルムは低周波数領域の電気特性が導電性微粒子の添加量に応じて大きく変化する。500Hz未満の周波数依存性を調べると無添加のフィルムに比較して周波数依存性が大きくなっている。そしてその変化が導電性微粒子の添加量に応じて変化している。また、この変化の仕方はパーコレーション転移とも関係している。
高周波数領域では大きな変化が生じていないのでこの変化は、導電性微粒子の電荷二重層の影響であることが想像される。この点に気がつくとマトリックスを構成している高分子との組み合わせや、添加剤の影響をうけることも推定できる。粒子の充填量が増加しクラスターを形成するようになるとそのクラスターの効果が大きく出ることも推定されパーコレーション転移との関係が見えてくる。
こうした想像は実験データを揃えてみると間違っていないことが分かってくる。そしてマトリックスの高分子をコンデンサーに見立て、導電性微粒子を抵抗で置き換え、コンデンサーと抵抗との接続モデルを組み立て数値シミュレーションを行うと実験データによくあう結果となる。このシミュレーションは2次元で行っても実験で観察される現象をうまく表現できる。これはクラスターの成長効果の影響が大きいためで、パーコレーション転移とインピーダンスの関係を見積もるシミュレーションであることに気がつく。
この導電性微粒子分散系フィルムの低周波数領域におけるインピーダンス変化が重要になってくるデバイスとしてカラーレーザープリンターやカラー多機能複写機に使用されている中間転写ベルトや帯電防止フィルムがある。しかし、これらのデバイス評価を表面比抵抗や体積固有抵抗だけの測定で済ませていないだろうか。インピーダンスと諸特性の関係を調べると今まで見えていなかった世界が見えてくる。研究開発のおもしろさである。
pagetop