2013.03/23 加硫ゴム
最近気がついたことだが、身の回りの製品に加硫ゴムが少なくなった。ゴムのような感触の材料の大半は熱可塑性エラストマー(TPE)か樹脂に動的加硫ゴムを分散した複合材料である。自動車用タイヤは今でも加硫ゴムである。しかし、子供用遊具に使われているタイヤのほとんどは、TPEである。加硫ゴムがどうかの判別は加熱してみるとわかる。
1980年前後のころはせいぜいポリウレタンエラストマーが加硫ゴムの代替であり、材料が高価だったのでそれほど普及していなかった。しかし、加硫ゴムのプロセスコストに対して容易に射出成形できるTPEは、材料の低価格化もあり、急激に普及してきた。
手元で使用しているマウスはフィット感が良く長く愛用してきたが、材料設計が未熟なTPEのため最近べとべとしてきた。可塑剤がブリードアウトして表面付近の可塑剤濃度が高くなったためである。購入したときには加硫ゴムとほとんど変わらない感触だったので加硫ゴムと信じていたが、TPEであった。だまされたような気持ちである。
加硫ゴムを製造するためには、高分子鎖どおしを橋かけしゴム弾性が出るようにしなければならず、加硫という工程が必要である。通常10分前後の加硫のために時間が必要である。TPEは、高分子鎖が樹脂とエラストマーでできており、樹脂部分が橋かけしたような効果を出してくれるので加硫しなくともゴム弾性が得られる材料である。ゆえに射出成形で加硫ゴムのような感触の製品を短時間で成形することができる。
加硫ゴムとTPEでは、室温で使用している限りあまり材料としての感触に大きな違いを感じることはない。しかし、耐摩耗や耐熱の要求される分野では、やはり加硫ゴムのほうが諸物性のバランスが優れている。先ほどのマウスの例のように長期間使用していると可塑剤がブルームして感触が大きく変わったり、変形が激しく元の形状にもどらなくなったりすることもTPEの欠点である。加硫ゴムを完全に置き換えることが可能なプロセス性に優れた材料はまだ存在しない。
カテゴリー : 高分子
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