2013.03/24 問題解決法と科学
会社の研修で勉強になったと感じたテーマに問題解決法がある。学校では数学や物理、化学の問題解決で演繹的推論や数学的帰納法を学んできた。実務では同様の方法をビジネスツールなどを用いて誰でもわかりやすい手順で解決し、その途中経過はプレゼンテーションの資料にもなる。
しかし不思議に思ったのは科学的方法ばかりである。科学的方法で全ての問題が解けるのか。このような疑問を持ったのは新入社員研修を終える頃である。社会科学や人文科学とすべてに科学という言葉がつく。だから科学的方法でビジネスプロセスにおける問題まですべて解ける、という説明では納得できなかった。
大学の教養課程の哲学で科学とは思想の一つに過ぎない、と習った。非科学的な思想の世界もある、ということである。科学で全てが説明できる、というのは人間の思い上がりで、科学で説明できない世界も存在する。また、人類の進化は科学的思想によるもので知性そのものについてはほとんど進化していない、とも。哲学という学問の存在意義を理解できた授業であった。
もし科学が思想の一つならば、科学的問題解決法以外に非科学的問題解決法というものも存在しうるはずで、この両者を学んで初めてあらゆる問題が解けるようになる。哲学者のイムレラカトシュは、「方法の擁護」という著書で「科学的方法で完璧に証明できるのは否定証明だけだ」と言っている。すなわち現象の肯定証明を科学的論理で全て行うことは不可能と述べている。それゆえ実験を用いて肯定的な現象を示す必要がある。実験が仮説を設定して行われる理由である。
頭のいい人が、フラッシュアイデアを聞き、すぐに否定するのは科学的に容易だからである。頭のいい人に否定されたからと言ってアイデアを捨てる必要は無い。
有機高分子と無機高分子を均一に混合して高純度SiCの前駆体を合成するアイデアを同僚に話したら、すぐに否定された。フローリーハギンスの理論を用いて説明してくれた。2年間温めていて無機材質研究所へ留学の機会ができたときに実験を行ったところ大成功で、均一で透明な有機無機ハイブリッドが合成された。それいらいフローリーハギンスの理論で説明できないアイデアを考えるのが趣味になった。
目の前の問題について科学的にとらわれすぎると当たり前のアイデアしか出てこないときがある。そのようなときに非科学的な視点でブレークスルーを行い、何度も発明を成功させてきた。しかし、最初の着眼点は否定されることが分かっていたので誰にも話すことは無かった。iPS細胞のブレークスルーも非科学的プロセスでブレークスルーが行われ、山中ファクターが発見された。そしてノーベル賞受賞である。非科学的方法を科学的ではない、と馬鹿にするのはブレークスルーの機会を逃すもったいない行為である。
カテゴリー : 一般
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