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2013.03/26 高分子材料の劣化

高分子材料の劣化という問題は取り扱いが難しい。例えば加硫ゴムを室内で保存した場合には100年以上その力学物性を維持している、というデータもある。これは保存状態が良い場合である。

 

銀塩写真フィルムでも保存状態が良ければ100年以上その画質を維持する。保存状態が悪ければ30年前のネガでは退色が起こり、元の色など判別できない場合がある。写真フィルムの場合には見て劣化が分かるが、高分子材料の物性の場合には何らかの試験を行わない限り、劣化状態を知ることができない。

 

商品であれば品質の基本となる重要なスペックの劣化状態を試験して耐久性を保証する。大抵は商品の使用状態を想定した試験を行う。ここに落とし穴がある。商品に使用される材料一つ一つに関し丁寧に耐久データを一通り揃えておくべきである。手元に無ければ材料メーカーに要求すれば良い。

 

高分子材料の劣化というと高分子の主鎖の断裂に伴う物性変化を問題にする場合が多い。空気中の酸素や紫外線により高分子の主鎖断裂は発生し、その結果力学物性は低下する。戸外で使用される高分子材料はこの点を配慮し材料設計されている。

 

ところが高分子材料の劣化としてブリードアウトの問題を取り扱わない場合がある。ブリードアウトを単なる拡散現象として捉え、その対策を行うだけで済ませる場合である。確かに静的な状況ではブリードアウトは拡散現象としてシミュレーションどおりの結果が得られる。ゆえに経時変化の予測を立てやすい。

 

しかし、温度変化や振動など外部エネルギーが関与するときの高分子内の拡散現象は複雑になる。すなわち静的な拡散速度よりも促進される場合がある。可塑剤の場合にはブリードアウトが促進された場合にクレーズの発生原因となり、そこが破壊の起点となって高分子材料の主鎖の断裂が起きなくとも力学物性の低下が起こる。その他ケミカルアタックおよびその類似現象による劣化については明日説明する。

カテゴリー : 高分子

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