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2013.04/01 樹脂の混練について

混練技術の基本は、剪断流動と伸張流動をうまく組み合わせて材料を均一に練ることだと35年前に習った。ゴムの混練については、バンバリーミキサーとオープンロール混練といったバッチプロセスを組み合わせて行う。バンバリーミキサーで混練する時間は通常5分前後である。オープンロール混練(以下ロール混練)では処方に依存して混練時間が大きく異なる。

 

バンバリーミキサーをのぞくと、いかにも剪断流動を発生しています、と物語る構造をしている羽根が見える。剪断流動は、混練効率は高いが混練後の高次構造のサイズに限界がある、と言われている。すなわちミクロンオーダーよりも細かい構造を剪断流動で創り出すことはできない、とされていた。されていた、と言う理由については後日説明するが、そのために伸張流動を発生可能なロール混練で仕上げを行う。伸張流動は、混練効率は悪いがナノオーダーまでの構造を作り出すことが可能と言われている。ロール混練ではロール間のギャップ幅を変更して伸張流動の発生を制御できる。

 

ゴムの混練では、バンバリープロセスの後のロール混練で物性が決まる、と言われており、ロール混練を2プロセス以上に分割して行うこともある。また、バンバリープロセスの前にロールプロセスを入れることも稀にある。例えば天然ゴムでは、分子量が大きいのでそのままバンバリープロセスにかけた場合にうまく混練できない処方もある。その場合には、一度ロール混練を行い、天然ゴムの高次構造を壊してからバンバリーに投入する、といったノウハウもある。

 

ゴムの世界が難しいのは、このようなバッチプロセスの組み合わせで大きく物性が変化し、その変化を制御する方法がブラックボックス化しているためである。有限要素法などでシミュレーションを行っても解析できない、と言われている。ただそれなりの高分子の知識があれば、実際の実技を通してノウハウの意味が「見えて」くる。新入社員時代の指導社員は、優秀なレオロジストで各プロセスでどのようなことが起きているのかマンガでわかりやすく教えてくれた。また、当時の研究所ではニーダー派とバンバリー派がいたが、工場見学をしながら実験室でも大きなバンバリーを使用しなければいけない理由も分かりやすく説明してくれた。

 

定年退職前はゴム会社ではなく写真会社に在籍していたが、6年間樹脂開発を担当した。他社の樹脂混練技術者とのミーティングの機会を通して樹脂混練の世界がゴムに比較して大雑把であることが気になった。少し意見を述べると「素人には分からないですよ。」とたしなめられるので、黙って蘊蓄を聞いていたが、2000年頃に4年間推進された高分子精密プロジェクトにおいて学術的には成果が有りながら、実務では大きな成果が得られなかった理由を理解できた。おそらく当時も同様の狭い了見で議論が進められた可能性が高い。L/Dの大きな二軸混練機を作りだした程度の進歩しか無かった。

 

写真会社に転職したときに、実験室に小さなバンバリーミキサーがあったので、ポリオレフィン樹脂を練ってみた。自由体積の大きさと混練時間の関係を見てみたら、30分間以上混練すると自由体積の大きさが変化しなくなる。一般の二軸混練機では樹脂投入後5-8分程度で混練された樹脂が出てくる。樹脂工場を4社ほど見学したが、10分以上混練にかけている企業は無かった。おそらく経済性の観点で10分以上混練していないのだろうと思われるが、混練技術の理想は誰が成形しても品質の安定した成形体ができることを保証できる技術だと思う。現在の樹脂の混練技術は、その理想から遠いように思う。ゆえに成形技術の研究が今でも重要な一分野になっているのだろう。射出成形の品質問題に遭遇する度に樹脂の混練技術の問題を思い出す。

カテゴリー : 高分子

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