2013.04/05 高分子ガラス
昨日光学用樹脂材料について述べたが、ガラスの定義について高分子の教科書にあまり書かれていない場合があるので、少し説明する。無機材料の教科書にはガラスの定義が書かれていたが、最近の無機材料の教科書を読んでみると定義が書かれていないことに気がついた。
ガラスの定義は、非晶質状態で、かつガラス転移点をもつ材料と習った。すなわち非晶質材料でもガラス転移点を持たない材料があり、ガラス転移点を持つかどうかで非晶質材料は二種類に分類される。
無機材料の熱分析(DSC)結果は大変分かりやすい。しかし、高分子材料の熱分析(DSC)結果には頭を悩まされる。慣れてしまえば悩まなくなるが、ゴム会社で過ごした新入社員時代はその結果によく悩まされた。特にガラス転移点については、信号が出るはずのところにでないときがある。
何度も測定を仕直していると、指導社員がコツを教えてくれた。ガラス転移点が出そうなところでスキャンを途中停止し、加熱あるいは冷却状態を保持したまま3分待つ。その後スキャンすればガラス転移点が現れる、というのである。やってみるときれいにガラス転移点がチャートに描かれる。3分という時間も覚えやすい。カップ麵の食べ頃と同じである。
ここでまた悩むことになる。このようにして得られたガラス転移点をどのように解釈すれば良いのか。例えば製造条件が異なる材料では、熱履歴に差異があるのでガラス転移点は変化する。まれにガラス転移点が現れなくなる条件もある。特許ネタには良いが、このガラス転移点が現れない状態というのはどのような状態なのだろう。熱的な解釈はできても状態のイメージを未だにつかむことができていない。
このように高分子では同一高分子の非晶質状態でガラス転移点が現れる場合と現れない場合がある。無機材料では経験したことが無い。35年の研究開発で無機材料と有機材料の両者を扱ってきて、高分子材料には無機材料に無い不思議な現象をいくつか体験している。
カテゴリー : 高分子
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