2013.04/10 PENフィルムの巻き癖(3)
PENの巻き癖とその高次構造の関係については、科学的な香りをつけた報告がライバル会社から発表されていた。やや胡散臭い論理で技術の正当性が説明されていた。発表内容を読む限りにおいては、唯一のすごい科学技術でそれに取って代わる技術開発は不可能に思われた。学会賞の審査員もそのように思ったに違いない。
技術内容は熱処理により高分子の高次構造を制御する“もすごく高度な”技術と言われていた。しかし、熱処理技術は高分子材料分野よりも金属やセラミックス材料分野のほうが進歩している。温度というパラメーターが強度因子であり、容量因子であるエネルギーと異なることの重要性を高分子材料の研究者はあまり考えない。PENの巻き癖解消技術についてもライバル特許は大きな穴を残していた。恐らく気がついていなかったはずである。
大量の特許群を整理してみると大穴があいていた。しかもその大穴は長時間アニールする必要が無く、ロールtoロールで巻き癖解消が可能な生産効率の高い技術領域で、むしろ学会賞の技術よりも好ましい領域である。技術開発で注意しなければいけないのは、自分たちの技術が科学的に完璧で唯一の技術とうぬぼれてしまうことである。
科学とは技術の世界に包含されることを忘れている。非科学的な技術という領域があることを技術者は、いつも忘れないことである。非科学的な技術とは科学的に解明されていないか、あるいは科学的に否定される技術のことである。
実は学会賞を受賞していたが、ライバル会社の説明には科学的に怪しい内容が多数含まれていた。怪しい内容をさも科学的であるがごとく現象をうまく説明していた。学会賞を取るにはこのようなプレゼンテーション能力が重要である。その結果、技術者全員がそれを信じたのだろう。そのおかげで特許に大穴が残されることになった。
弊社の問題解決法ではこのような似非科学の技術に対抗するアイデアをうまく考え出すことが可能な方法を提供している。すなわち科学的に完璧に説明されないかぎり、どこかに穴を見いだすことができるのである。科学的に完璧な場合には弊社の問題解決法でも太刀打ちできない。それでも、非科学的技術で解決できる余地が残っている場合には弊社の問題解決法でアイデアをうまく導き出すことが可能である。このPENの巻き癖解消技術でも科学的考察ではなく問題解決法で技術手段を見つけ出した。
<明日に続く>
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