2013.04/19 複写機の中間転写ベルト
カラーレーザープリンターやカラー複写機には、中間転写ベルトという部品が使われている。高級機には溶融成膜によるポリイミド製の半導体ベルトが使用されているが、廉価版には押出成形による樹脂ベルトが使用されている。成形技術の観点から言えば、溶融成膜よりも押出成形が低コストである。また環境の視点でも溶媒を使用しないので押出成形の中間転写ベルトがLCA的に優れている。経済効果で表せば3倍以上の差がある。
このように押出成形が優れているのに未だに溶融成膜によるポリイミドベルトが使用されている背景は、力学特性と電気特性に差があるからだ。ベルトの押出成形では樹脂の合流部(ウェルド)が少なくとも1ケ所できるのでその部分の電気特性が他の部分と異なる宿命を持つ。すなわち溶媒を用いた溶融成膜では均一性に優れたベルトを製造できるが押出成形ではウェルドの存在のため均一性が劣ったベルトしかできないのである。
しかしウェルド部分について押出成形で用いる樹脂の均一性が影響していることに気がつくと、均一なコンパウンドを用いればウェルドの影響を小さくできるのではないか、と期待する。ところがこの均一なコンパウンドというのが現在一般に使用されている混練技術では難しい。
中間転写ベルトは、樹脂にカーボンを分散させ半導体領域の電気抵抗に調節し、製造する。要求される電気抵抗は、10の9乗から10の11乗Ωcmの均一なベルトであるが、カーボンは10Ωcmよりも抵抗の低い材料である。パーコレーション転移が生じれば、一気に樹脂の抵抗は10000Ωcm未満に下がってしまう。ゆえに樹脂にカーボンを分散させた樹脂を用いて中間転写ベルトを製造する技術はものすごく難易度の高い技術である。
10の5乗Ωcm前後の半導体粒子を用いれば技術の難易度は一気に下がる。しかし、その領域の半導体粒子は一般に10,000円/kg前後するので技術の難易度が下がるがコスト上昇する。溶融成膜技術は押出成形に比較してパーコレーション転移の制御を行いやすい。すなわち溶液状態で均一にカーボンを分散することができ、溶媒の乾燥条件を制御してその均一性を保つように製造すれば良いからだ。しかし押出成形では、仮に均一なコンパウンドを用いてもウェルドの存在を克服する技術が必要になる。各社それぞれの技術を用いて、押出成形でもベルトの面内の抵抗偏差が1桁程度のベルトを作る技術ができている。ただし、ポリイミドベルトの0.5桁前後の偏差には追いついていない。
活動報告ですでに紹介した新しい混練技術は、すでに3年前から特許が公開されたので特許を読まれた方もいるかと思うが、二軸混練機を用いてもコンパウンドの均一性を劇的に上げる効果がある。この混練技術を用いて製造されたコンパウンドを使用して押出成形でベルトを作ると、面内の抵抗偏差が0.5桁未満のベルトができる。
コンパウンドの均一性というのはわかりにくい因子であるが、中間転写ベルトのような電子部品では、コンパウンドの均一性という因子の重要性が明確になる。
*本内容は、特許とコニカミノルタテクニカルレポートにすでに公開済。
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