2013.04/26 成功する技術開発(3)
χと高分子のSPについて高分子の教科書の取り扱いは様々である。明確にχがSPの関数であるがごとく説明しているケースやSPに触れていないケースなど様々である。しかしはっきりとχと高分子のSPとは異なる、と書いてある教科書は存在しない。
高分子のSPについて、実務上は低分子有機溶媒に溶解して決める。簡便にはSmallの方法が用いられているようだ。OCTAを使用できる環境であれば、SUSHIで温度依存性まで求めることができる。しかしこれらの方法で求められた値のお互いの相関係数は1ではない。例えば、SUSHIでは大別して2通りの方法で求めることができ、それぞれで求められた値と実務的SPとの相関係数は異なる。SUSHIの2通りの方法で求められた値どおしの相関についてもわずかにくずれている。
実際に2種類の高分子を混合したときに観察される挙動は複雑で、混練プロセスにより異なっている。どのような状態を均一に混合された状態と決めたら良いのかさえも難しい。そもそも1種類の高分子について混練しただけでもプロセス条件で異なった状態になる。高分子材料ではどのような状態を基準に論じたら良いのは実務上難しい問題がある。
初めてゴムの混練実験を行ったとき、指導社員から1組の加硫ゴムサンプルを渡された。そして、まずそのサンプルと同一の処方を混練し4種類の力学物性がすべて一致するゴムが得られてから実験を開始するように指導された。ところが、このゴムサンプルと同様の力学物性を有したゴムを再現良く作れるまで5日かかった。バンバリーとロールを組合わせて混練していたのだが、勘所を指導されていてもそれが身につくまで1週間近くかかったわけだ。
特殊な樹脂補強ゴムでプロセス変化が顕著に物性に表れる。その後様々なゴムを混練したが、そのサンプルほど物性がプロセスに依存していた例を体験しなかったので高分子の混合がどのような意味を持っているのか理解するのに貴重な体験だった、と思っている。一度この体験をすると、高分子の混練プロセスだけでなくその他のプロセシングについても慎重になる。
13年前、レンズ材料を担当したときに某ポリオレフィン材料だけを混練してみた。横軸に混練時間を、縦軸にガラス転移点における熱力学的値をとり、その変化を調べた。驚くべきことに30分以上混練しないと縦軸の値が安定しないのである。30分以上4時間まで混練したが40分から安定してばらつかなくなった。分子量分布はわずかに変化していたが誤差の範囲であった。
この実験結果は、日々納入される材料の品質安定性とも関係する。材料スペックや力学物性の偏差は小さいが、あるパラメーターのロットばらつきは大変大きいにもかかわらずスペックに入っていない。その一方でレンズ成形においてばらつきに悩んでいる実態を見て複雑な気持ちになった。<明日へ続く>
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