2013.05/02 成功する技術開発(9)
科学的に考察して実現不可能な技術を担当したときに中断を申し出ることができる状況であれば中断するのが無難な選択である。しかし、その選択ができない状況の時には、担当したテーマの完成の姿に最も近い“モノ”を実現して見せて、その”モノ”が当初の方針と異なることを説明し方針変更について周囲の承認を得て技術開発を続けるのが成功する技術開発のコツである。
科学の世界で真理は一つであるが、技術の世界では真理は必ずしも一つでは無い。技術の世界の真理とは、その技術で製品の機能を達成できるかどうかと言う点が重要で科学的な真理と一致しないときもある。換言すれば科学的真理にとらわれる必要は無く、製品の機能を達成できる技術手段を考えることが重要である。
絶縁体の樹脂に6ナイロンとカーボンを分散し、半導体シートを作る時に、絶縁体の樹脂に6ナイロンが相溶せず海島構造となるのは、フローリーハギンズの理論では重要な真理の一例になるかもしれないが、半導体シートのあるべき姿からすればどうでも良いことである。重要なのはカーボンブラックのナノオーダーの弱い凝集体が絶縁体の樹脂の中で安定に分散しているシートを作り出せるかどうかである。
前任者の目指した目標を否定し、新しい技術コンセプトによる開発を納得してもらうためには、最低限の制約の中で実現したい“モノ”を作ってみることである。不完全でもよく、とにかく担当した技術開発テーマにまつわる制約を少なくすることが肝要で、方針変更した時に実現可能な技術の前に存在するすべての障害を取り除くことである。すなわち、新しい技術のコンセプトで実現した“モノ”を作って、開発の方針変更について周囲の承認を早急に取り付ける作業を最初に行う。
コンパウンドの成形技術を研究開発している会社では、コンパウンドを外部調達している場合がある。コンパウンド供給メーカーの協力が得られるのならばそのメーカーの技術力を利用して実験を行えば良いが、通常コンパウンドメーカーは非協力的である。そのような場合は装置メーカーから装置を借りて自分でコンパウンドを開発するところから始めることになるが、その技術が無いときには弊社のようなコンサルタントに相談すると良い。専門家に技術イメージを伝えると、実力のある技術コンサルタントならば希望を実現してくれる。
<明日に続く>
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