2013.05/07 成功する技術開発(14)
研究開発マネジメントに関する著作は多い。しかし現実の悩ましい問題を解決してくれる指南書を見たことが無い。理想的なマネジメントを行うことができたとしても、そのマネジメントの成否は開発現場で生み出される成果に左右される。開発担当者のマインドが不健全な場合には成功する技術開発を実践することは難しい。昨今はゆとり教育を受けた若者が開発現場に増えてきている。彼らのクールな目をどのように熱くするのか、難しい問題がある。
成功する技術開発で一番大事なことは、モデルでも良いから開発の初期段階でゴールに相当する“モノ”をまず造ってみることである。不完全でも良いから世間の技術を駆使して“モノ”を造ってみて開発の難易度を予測することである。現在世の中にある技術を駆使して“モノ”を造ろうとして“モノ”ができなければ、3年経ってもできない、と考える。不完全でも一応機能する“モノ”ができれば、あとは時間とコストの問題である。企画段階で何とか”モノ”ができたならば、時間とコストをかけて必ず造ることができる。時間とコストの問題に持ち込めれば技術開発の成功予測をしやすくなる。コスト削減が困難であれば企画を中止する。時間はマンパワーで調整可能である。
必ずできる技術手段を一つ見つけることができれば、技術開発シナリオを考えやすくなる。但し、この技術開発シナリオを考える時に、必ずできると思われる技術手段が失敗したときのことも考えなければならない。全く異なるコンセプトの技術手段を考えても良いし、コンセプトが同じアイデアでも構わない。とにかく2つ以上の技術手段を用意してシナリオ作りをしなければならない。弊社の研究開発必勝法ではそのシナリオの作り方も指導している。
この技術開発シナリオで大切なことは現場に密着したシナリオを作ることである。ロードマップとは異なる発想が必要となる。市販の研究開発に関する指南書の中にはロードマップを重視している考え方があるが、研究開発の成否が現場の成果に左右されることを考えると現場に密着したシナリオの重要性がわかる。マクロな経済の動きも研究開発に影響を与えるが、研究開発にまつわる経営環境の問題は多くの書籍で取り上げられている。しかし多くの書籍で取り上げられている注意を払って、完璧と思われるマネジメントを行っても失敗する”不思議な失敗”が存在する。
成功する技術開発では、不思議な失敗を無くすことが大切で、外部要因の失敗は、もし企画段階で充分な解析が行われていたのなら避けられない失敗とあきらめるべきだろう。他社の技術開発に携わっている方と研究開発マネジメントに関する議論をしたときに、世間に不思議な失敗例が多いと感じた。外部要因の変化等明確な失敗は残念であるが誰でも納得する。しかし、不思議な失敗は開発担当者のモラールを下げる。
研究開発マネジメントが悪くても成功例はある。それらはすべて現場の努力の成果である。現場の努力の成果を引き出すマネジメントが重要で企業風土以外にも現場のスキルといった課題がある。
<明日へ続く>
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