2013.05/11 ミドリムシプラスチックの反響
ミドリムシプラスチックの反響は、予想外に少なかった。高分子同友会の講演で講師が「藻からオイルを抽出する技術に比較して注目度が足りない」と嘆いていたが、本当だった。バイオエネルギーは100円/lの壁が問題になっているのだが、ミドリムシプラスチックは、光学用樹脂を目標にすれば500円/kgでも充分に採算ラインになる。技術者ならば、そのラインは既に楽に越えていることを読み取らなければならない。
実は30年以上前、半導体用高純度SiCの企画を立てたときに上司から、指導とは言えない軽蔑に近い批判を受けた。しかし、その企画は紆余曲折の後、30年事業として続く仕事になった。上司は研究肌の人でコストがどのような展開をするのか読むことができなかった。しかし最もショックを受けたことは、実験室で購入していたポリエチルシリケートが、タンクローリーで購入すると1/10の価格になることと、実際に見積もり書を取った後の煩わしさだった。
業者からはいつから事業を始めるのか問い合わせが頻繁に来るようになった。また新聞社からも問い合わせの電話が来るようになった。上司からは見積書を取ったことをひどく叱られた。当方は企画書で上司から指摘された量産時の価格を調べるようにと指示をもらったので、そのまま材料メーカーに問い合わせただけだった。
入社して2年、まだ駆け出しの技術者に量産時の価格を調べよ、と調査方法も言わずに指示を出す上司とそれをまともに受けて見積書を取った部下とを見比べたときに、今ではため息が出るが、原材料価格が1/10になるのを見ても、企画を否定した判断はどうかと思う。最初から認められない企画であれば、そのように部下の指導をすべき役目が管理職なのである。
ミドリムシプラスチックは、まだ研究が始まったばかりであるが、射出成形体を実際に見て光学用樹脂としてパーフェクトポリマーと呼べるのではないか、と感じた。バイオポリマーなので分子量分布も揃っている。そして非晶性でTgも高い。少なくとも光学用ポリオレフィン樹脂よりも優れている実際のデータが揃えば世間の見方もかわるだろう。しかし、その時注目しても遅い。注目されていないが良いシーズを拾い上げ事業化に努力するのも技術者の大切な役目である。
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