2013.05/13 成功する技術開発(18)
無機材質研究所I先生との電話の中で、留学生受け入れ定員がすでにオーバーしていること、またセラミックスを事業としている会社の留学生を優先していることなどを知らされ、現状で専門外の研究者の留学は難しい、と断られた。しかし、2週間後のご講演予定を知らされた。電話でI先生の優しい人柄を感じられたので、2週間後のご講演後の面会に備え、猛勉強をした。また50周年記念論文の内容を高純度SiCの事業に絞りこんだ論文に仕上げた。
I先生の講演終了後1時間弱の面談で、専門外の研究者が今無機材質研究所へきても指導できないので留学生は単なるお手伝いとなってしまう現状を説明された。しかし、勉強は独学で進めることと、用意していた高純度SiCのビジョンを熱くプレゼンテーションした。この熱意が伝わり、後日会社の上司と無機材質研究所へ訪問することになった。
セラミックスフィーバーの始まる前から、無機材質研究所はファインセラミックス分野で世界の先端を走っていた。取締役と直属上司の3人でI先生を訪ねたところ、無機材質研究所長をご紹介された。研究所長は、以前勤務されていた大阪工業技術試験所時代にブリヂストンタイヤ㈱創業者石橋正二郎氏と親交のあった話をしてくださるとともに、「SiCという材料ならば㈱ブリヂストンが研究するにふさわしい。」、と会社の幹部を前に力強いアドバイスをしてくださった。
さらに、SiCという材料はエンジニアリングセラミックスとして注目を集めているが、高純度化できれば半導体分野でも有望な材料となること、そしてその耐熱性ゆえにパワートランジスターの材料として期待されており、将来電気自動車用の電装部品事業に進出できる、と夢のようなお話を語ってくれた。専門外の若者が書いた論文よりも迫力があり、会社の幹部とセラミックスの夢を共有することができた。
<明日へ続く>
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