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2013.05/31 科学と技術(酸化スズゾル3)

特公昭35-6616は世界で初めて非晶質酸化スズが導電体であることを示した技術論文である。昭和50年前後の特許では、この特許が公知事例として引用されていたが、50年末から引用されなくなっていった。

 

おもしろいのはこの特許が引用されていたときのライバル特許には結晶性酸化スズ透明導電体を帯電防止材料として利用することが権利範囲として明示されていたのだが、この特許が引用されなくなったあたりから、その存在すら無いような特許の書き方に変わっていった。

 

すなわち結晶質だろうが非晶質だろうがすべてが自分たちの権利範囲だ、という書き方に特許が変わっていったのである。審査請求時の証拠としてあげられている資料を調べると、驚くべきことに昭和35年の特許を誰も証拠書類として出していないのである。

 

科学の歴史から見れば昭和35年に非晶質透明導電体の技術が存在した、という事実は大変なことなのである。その約20年後に高純度酸化第二スズ単結晶が絶縁体であると、科学的に証明されたのだから、技術が科学よりも20年近く先行していたことになる。しかもその特許には透明導電体の湿度依存性までデータが示されており、電子伝導性であることまで記載されていたのである。

 

一般には科学が技術を牽引している、と誰もが信じている。信じているから科学を発展させれば技術が発展し経済が成長する、と考えている。ところが科学の論理的な流れの中の発展とは関係なく、技術では突然変異のような展開をしている場合があるのだ。

 

導電性非晶質酸化スズについて1992年に科学技術大学の協力を得て見直しを行ったところ、暗電流の測定から結晶性酸化スズでは観察されない、導電性に関与するエネルギー準位を見つけることができた。ところがこのエネルギー準位の再現性は怪しく論文発表を見送っている。しかし、その後技術としてこのばらつきの意味が分かってきた。

 

科学では怪しい現象だが、技術では品質管理技術で安定な導電性を得られるようにできる。当時タグチメソッドが日本で流行しはじめた時であり、田口玄一先生の御指導を直接受けながら電流と電圧を測定し動特性でSN比の高い非晶質酸化スズゾルの製造条件をL18で容易に見つけることができた。

 

<明日に続く>

 

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料

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