2013.06/02 科学と技術(有機系太陽電池)
昨日名大名誉教授高木克彦先生の「有機系太陽電池の機能評価と規格標準化」というご講演を拝聴した。色素増感太陽電池の技術に関わる内容だが、この技術が実用化されるのか、単なる科学的な興味の対象で終わるのか不明確であった。
講演で示されたデータは、実用化されてもおかしくない技術データである。チャンピオンデータでないことは、学会発表のデータを見てきたから理解できる。色素増感太陽電池をエネルギーシステム商品として見たときに魅力的な企画ができる。発電効率のポテンシャルは現在主流のアモルファスシリコン太陽電池よりも2%低いそうだが、この普及が始まった太陽電池とは異なるカテゴリーの商品企画ができるのである。
今朝特許を調べてみたが、この10年出願された特許の中にはそのコンセプトに関する発明は存在しない。ボーイング787の事故があったのでコンセプトに気がついた人がいるかもしれないが、新しいコンセプトを思いつくことがそれほど困難な行為とは思っていなかった。しかし、この10年間の特許に存在しないということは発明を思いつくのが容易ではないのだろう。
科学で考えている限り思いつかないコンセプトである。技術で考えれば、当たり前のコンセプトである。おそらくこのあたりが関係しているのかもしれない。弊社の問題解決法プログラムは、このあたりに着眼して開発したプログラムである。
以前この蘭でも書いたのだが、科学は真理を追究する思考方法をとるが、技術は機能を追究するのである。科学の思考方法で思いつかないコンセプトでも技術の思考方法で容易に出てくることは32年間何度も経験した。おそらく色素増感太陽電池に関わっている人たちは、科学的思考の研究者ばかりなのだろう。
さて色素増感太陽電池は実用化できるのだろうか。量産されたときのコストはアモルファスシリコン太陽電池よりも安くなる、といわれている。その構造からロールtoロールによる生産が可能なので、日本で生産してもコストはアモルファスシリコン太陽電池よりも安くなる可能性がある。
発電効率が2%低いというが、明るさとともに発電効率が低下するアモルファスシリコン太陽電池に比較すると、明るさに影響されずほぼ一定の発電効率を示す色素増感太陽電池は、魅力的である。例えば部屋の中で使用するときには、アモルファスシリコン太陽電池よりも色素増感太陽電池のほうが発電量が多い。
技術的な観点からは魅力的な商品を思いつく。
<明日に続く>
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