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2013.06/14 科学と技術(タグチメソッド9(コツ))

タグチメソッドを理解するための近道は、科学の研究と技術開発の違いをまず理解することである。科学の研究は言い古されているように真理の追究がその目的にある。技術開発は、それに対してロバストの高い機能の実現が目的だと田口先生は言われた。まことに至言である。

 

科学の研究は自然現象が相手であり、そこで観察される誤差は偶然誤差を前提とするが、技術開発では、ロバストの高い機能の実現という理想に向けて必然誤差を考える。まず、測定値で観察される誤差について義務教育で習ってこなかった必然誤差というものを理解しなくてはならない。計測された値について四捨五入とか誤差を丸めるなどという考え方を前提にしていない。むしろ誤差を積極的に評価している、ぐらいの感覚である。

 

だから実験を行うときにも誤差因子を多数取り入れて実験を行う。タグチメソッドでは機能を安定化させる制御因子を見つけることが目的であるが、この誤差因子はそのために重要な因子である。誤差因子は一つだけで無く可能な限り多数の因子を取り上げる。そして基本機能に対して誤差がどのように働いているかに注意しつつ、誤差を調合して実験を行う。

 

この誤差の調合は結構注意が必要である。調合誤差について2水準から3水準の実験を行いSN比を求めるので、誤差因子の組み合わせ方を間違えると変動が小さくなり、制御因子を見つけることが難しくなる場合がある。誤差の調合は変動が大きくなるように組んでやることがコツである。

 

また、信号因子も可能な限り大きく変動させる。信号因子については思い切って大きく振れ、というのが田口先生のお言葉である。タグチメソッドの習い始めはこのあたりにも慎重になる。信号因子を大きく振ったら誤差が大きくなってしまう、という心配をする。ところがタグチメソッドでは誤差が大きく出るところでSN比を安定にする制御因子をみつけようと(ここまで言って良いのか分かりませんが)しているのでこの心配は無用だ。

 

制御因子を見つける作業には直交表を利用すると便利だ。直交表はL18程度の大きさで充分。あまり大きな直交表を用いると結果をまとめるまで時間がかかりすぎる。L9やL8でもよいが、もしL9やL8を繰り返して用いるくらいならL18を1回やった方が良い。

 

直交表を用いた実験は、慣れないと気持ちが悪いそうだ。また直交表の実験では時として欠損データが出たりする。日科技連の実験計画法で欠損データがあるときのデータ処理方法をもちいても良いが、タグチメソッドでは、欠損データに関してはSN比の平均値を入れるだけでも大丈夫である。このあたりは、データ整理を行うときに大変助かる。

 

<明日へ続く>

カテゴリー : 一般

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