2013.06/20 科学と技術(混練3)
高分子の混練装置には、バッチ式と連続式があり、バッチ式にはバンバリー、ニーダー、ローラーが、連続式には一軸から二軸さらには多軸式の混練機がある、と教科書に書かれている。そしてバッチ式はゴムの混練に用いられ連続式は樹脂の混練に用いられる、とある。
当方も混練に関する執筆を頼まれたときには、昔ながらのこの分類に従い説明をしているが、やや恥ずかしさを感じている。多くの書籍でこのような説明がなされているが、これは一例であってこの方式にとらわれる必要はない。むしろこの説明はタコツボ技術式説明だろうと思う。ゴムを連続式混練機で混練しても良いし、逆に樹脂をバッチ式混練機で練っても良い。
ただし、これは混練物の物性を考えなければ、の話である。すなわち混練物の物性を考慮した場合には、ゴムも樹脂もバッチ式混練機のロールで混練した方が良い。ただ、バッチ式は生産効率に難があり、一方樹脂の場合連続式で混練してもユーザークレームが少なかったので連続式混練機が用いられたという経緯がある。
加硫ゴムについては、連続式混練機では混ぜるのが難しい、と書いてある教科書がある。しかし、これはウソである。装置を工夫すれば、特に原材料の投入口を工夫すれば加硫ゴムでも混練可能である。ただし、連続式混練機で混練された加硫ゴムの物性は、熟練者によりロール混練された加硫ゴムに比較すると劣っているという問題の存在と、ストランドで押出したときのダイスウェル効果に驚く事になるが。換言すれば加硫ゴムは、樹脂に比較して混練プロセスにその物性が大きく左右される難しい材料といえる。逆に樹脂は適当に混練しても一応の物性が出るので経済性を優先して二軸混練機で混練されている、と説明した方が正しいだろう。
このようなことを書くと樹脂の混練技術者に叱られるかもしれないが、バッチ式による加硫ゴムの混練技術に比較して樹脂の連続式混練技術のほうが制御因子が少なく技術的難易度が低い。さらに加硫ゴム技術者はプロセスと物性の関係に苦しむが、樹脂技術者は成形技術者に問題を押しつけることが可能で、実際に樹脂メーカーの技術者の成形技術者に対する横柄な発言にびっくりしたことが多々ある。
混練は剪断流動と伸張流動の組み合わせで進行するが、剪断流動では剪断速度で混練物の状態が大きく変わる。また伸張流動では高分子溶融体の粘度でその効果が左右される。混練物のレオロジーや成形体の力学物性を考慮すると、ゴムと樹脂という種類で単純に混練装置が決まる、と考えない方が良い。
もし高分子の研究を行うときに、高分子を混練するための設備を1台しか導入できないとしたら(株)小平製作所製の二本ロールを購入すると良い。混練物の特性を示せば使いやすい二本ロールを納入してくれて使用方法も教えてくれる。ロール混練では使用方法を工夫するとカオス混合もできる便利な装置であるが、「技」が要求される難しい装置でもある。構造は二本の回転するロールがあるだけなので極めて単純である。
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