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2013.06/23 科学と技術(混練6)

科学的成果は普遍的真理の体系となるが、技術を同じような視点で表現するならば機能実現の方法論の体系と言ってもよいだろう。技術の普遍的方法論の一つであるタグチメソッドはロバストネスの高い機能を実現する方法の体系である。弊社の問題解決法は、機能実現で遭遇する問題解決のための方法論である。弊社の問題解決法は、人生の問題解決にも使用できるが、技術に使用すればアイデアが豊富に出てくる「技術のための問題解決法」である。

 

技術が機能実現の方法論の体系ならば、業界あるいは企業ごとに固有技術というものが存在してもよい。科学のように普遍的な技術も存在するが、固有技術は普遍的である必要は無い。その企業特有の技術でブラックボックス化されていれば、差別化技術となる。

 

混練技術は、技術というものを理解しやすい事例の一つである。例えばゴムの混練技術者の考え方と樹脂の混練技術者の考え方には共通しているところも存在しているが、基本的なところで異なっている。叱られるかもしれないが、ゴムの混練技術者は、混練物と成形体の機能との関係にかなり神経質であるが、樹脂の混練技術者には成形体の機能は成形技術と混練技術の総和であると考える甘さがある。

 

ゴムの混練技術者にも樹脂の混練技術者の言い分は理解できる。しかし、成形体の機能に問題が発生したときにゴムの混練技術者は自責の対応をとるが、樹脂の混練技術者は他責の対応をとる。コンパウンドユーザーの立場で面談した樹脂の混練技術者のすべてがそうであった。あまりの他責の考え方にあきれ、製品立ち上げの直前に、自分でコンパウンドのプラントを立ち上げたこともあった。

 

ゴム会社に勤務した経験では、材料開発者は自責の念が強かった。品質問題が発生すればまず自分たちの問題として対応していた。企業風土の影響もあるがゴム会社の場合には、混練技術と成形技術が一体となっている場合が多いからである。樹脂業界ではコンパウンドメーカーと成形メーカーは連携しない場合が多い。

 

またゴム材料技術の歴史を見るとバッチプロセスが前提で技術が進化してきたが、樹脂では連続式混練機が早い段階から使用されてきた。ゆえに樹脂の混練ではゴムの混練で見られるような多彩な技が入る余地が無かった。タイヤ業界の参入障壁が高いのはブラックボックス化された技術が多いことも一因である。

 

樹脂業界では二軸混練機を買ってくればいつでもコンパウンドを製造することができる。3ケ月で立ち上げたコンパウンドラインにはインターネットで見つけた中古機を使用したが、スクリューセグメントだけでなくペレタイザーまで中古機をそのまま使うことができた。さらにその中古機を使用したコンパウンドは外部から購入していたコンパウンドよりも品質が高く、後工程の成形技術を見直す必要なく、問題となっていた成形体の機能を容易に実現することができた。但し材料管理から生産、後工程の為の品質管理の一連の流れを組み立てる技術については、ゴム会社で体得したノウハウを用いたが―――。

カテゴリー : 一般 高分子

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