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2013.08/23 科学と技術(31)

高分子にカーボンブラックを分散し、その分散状態を制御する技術に関して、1992年に東工大住田教授の論文でパーコレーションとの関係が記載されている。特に住田教授の論文を調べたわけではないが、住田教授が行われた外部セミナーの資料に添付されていた論文である。

 

相分離状態で観察されるカーボンの分散に関して議論した論文であるが、特許ではパーコレーションという現象でありながらその言葉と結びつけていない技術が20年以上前から出願されていた。すなわちパーコレーションという現象も技術が科学よりも先行していた。

 

カーボンを分散して製造するゴム製のスイッチは、早くから実用化されていたが、これもパーコレーションという現象とカーボン粒子の形態をうまく活用した技術である。カーボン補強したゴムの弾性率がばらつく現象もパーコレーションと関係している。しかし、これらの技術事例はパーコレーションという現象でありながら、その科学的内容が明らかにされないまま用いられてきた。

 

科学の時代なので現在活用されている技術がすべて科学的に明らかになっている、と信じている人もいるかもしれないが、実際には科学的に明らかになっている現象の方が少ない。それらの現象を科学的に明らかにすれば、また新しい技術の発展を期待できる分野が多数存在する。

 

アカデミアの研究は無駄な物が多い、と批判される方がいるが、学会発表を見る限り本当に無駄な研究は半分くらい、と思っている。毎年日本化学会年会に参加しているが、半分程度は何らかの価値を見いだせる研究である。世間で批判されるほど日本のアカデミアはひどい状態ではない。

 

セラミックスから天然物合成、高分子合成、高分子物性まで様々な分野を技術として扱い、幾つかは科学的研究も行って学位を取って、学会の研究を眺めてみると、研究を評価する側の責任の重さを考えたりする。表面的に見ればムダと思われる研究でも、技術で遭遇した現象と結びつけると頭の上に電球が灯ったような感動を覚えることがある。そのような研究は無駄な研究では無いはずだ。

 

世の中の技術の中には、アカデミアの研究テーマとなるようなネタがたくさんあるので、アカデミアの先生も技術を勉強されると面白いのではないかと思う。

 

91年に写真会社へ転職し、酸化スズゾルを導電性粒子として用いてパーコレーション転移のシミュレーションとパーコレーションとインピーダンスの関係を研究していたときに、部下が住田先生のセミナーに参加した。当方はセラミックスの専門家として写真会社の社内で紹介されていたから、高分子フィルムの表面処理に関しては素人に見られていた。

 

そんな素人の企画だから軽く見られていたが、住田教授の論文は、怪しいと思われていた開発方針が間違っていないことを示す事例として当時役立ち感謝している。

 

技術は機能を実現する方法や行為であるから、専門分野よりも問題解決力が大きく影響する。問題解決力があれば専門性は不要といっても良いかもしれない。タグチメソッドの田口先生も類似のことを言われていた。弊社の問題解決法は技術者の問題解決力に大きく貢献します。

 

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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