2013.08/25 科学と技術(33:高分子の難燃化技術)
燃焼試験器のコーンカロリメータは建築材料の難燃化研究のために考案された評価装置だが、実火災に近い材料の難燃性試験ができるために、1998年の建築基準法改正以来、日本の建築規格にも取り入れられている。
普及しているUL規格では、自己発熱により燃焼を継続するタイプの難燃性を評価しているため、高分子の熱分解が燃焼を抑制し、気相で燃焼阻害を発揮する難燃剤の機能を高く評価する傾向にある。
これに対し、コーンカロリメータでは、サンプルが評価中にヒータから継続して輻射熱を受けるために気相における燃焼阻害を引き起こす難燃剤の効果を低く評価する。実火災ではこの評価条件がより適しているとの考察が成されているので、ノンハロゲン系難燃剤技術への期待が高まることになる。そしてこれは環境対策にもなるので昨今のノンハロゲン難燃化システム開発ブームとなっている。
コストから材料の物性、難燃性能まで考えたときに最も良い難燃化システムは、三酸化アンチモンと臭素系難燃剤の組み合わせシステムである。さらにコストダウンを狙えば塩素系難燃剤との組み合わせとなる。しかし、ノンハロゲン系システムでは、リン以外に有効な元素が50年以上行われた高分子の難燃化研究の歴史の中で見つかっていない。
組み合わせ難燃化システムかつ添加量が多い系で幾つかノンハロゲンのシステムが見つかっているが高分子材料の力学物性の低下を引き起こしている。リン系難燃剤では、一般にリンの含有率で難燃効果が決まる、と言われている。実際には含有率以外に、リン化合物の構造や高分子材料への分散状態で難燃性能は左右される。
ホスファゼン誘導体は、難燃剤として注目されて以来効果の高い難燃剤として有名で、さらに煙の発生も抑える優れた効果があると報告されている。しかし、ホスファゼン誘導体の全てがこのような性質を持っているわけではない。ホスファゼン誘導体でもハロゲン原子を含んでいる場合には、煙は多くなる。すなわちススの発生は気相で働くハロゲン原子が原因である。ただし、これは経験談で科学的に確認したわけではない。
科学的ではないが、30年前50種類ほど難燃剤の組み合わせシステムを検討したときに、ハロゲン元素を含んでいる系では、アラパホ式煙量計で評価したときに煙量が多かったので経験的に間違いではない、と信じている。
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