2013.09/26 国際セラミックス総合展2013
表題の展示会が東京ビッグサイトで27日まで開催されている。かつてセラミックスフィーバーの時代には、年に2回ほど類似の展示会があっても満員盛況の状態であったが、この会場では出展者も少なく閑古鳥が鳴いていた。時代の流れを知るために時間のある方はその様子をご覧になると勉強になる。ゴム会社も小さなブースで代わり映えのしない展示物をならべていた。
そもそも30年前のセラミックスフィーバーは、断熱セラミックスエンジンの開発を目標としたムーンライト計画がきっかけとなり勃発した。このフィーバーでセラミックスに関する材料科学は大きく進歩したが、この科学の進歩を牽引したのが企業の技術である。
金属材料科学は古くから着実な進歩があり、20世紀中頃から石油化学の急速の発展で高分子材料科学が発展し、最後に登場したのがセラミックス材料科学のイノベーションである。大学まで科学を学び、社会に出てセラミックスフィーバーを体験し、科学の進歩が実は技術の進歩に牽引されている実態を知った。学生時代に科学は技術を牽引している、と学んだが、現実は新たな挑戦による技術開発で新たな現象が見いだされ、それが科学の発展を促していた。
マッハ力学史を読んでみても、科学と技術について技術は古くから存在していたが、どこから科学が生まれたかを明確にすることはできない、と書かれている。ニュートンでさえ非科学的な思考を行ってニュートン力学を完成させた、と表現されている。科学の発展により技術の進歩が加速されることはあったが、科学が無ければ新たな技術が生まれない、ということは人類の歴史を見る限り起きていない。
確かに新たな科学的発見と言われている成果により、技術のイノベーションが引き起こされてきた事実は多い。しかしイムレラカトシュの「方法の擁護」を読むと科学で完璧に証明できるのは否定証明だけ、と書かれており、「発見」そのものは非科学的であった可能性がある。
学生時代に科学を学んできた目にはセラミックスフィーバーは新鮮な世界であった。新たな技術により新たな科学が生まれる、という学校で学んだ流れとは逆向きの潮流が起きていたのだ。経済性を無視すればセラミックス断熱エンジンの車「セラミックスアスカ」は公道を走ることに成功した。これはセラミックスフィーバー初期に生まれた技術である。
セラミックス材料の展示会の低調ぶりは、材料科学の進歩が止まった、と見るのか、新たな技術開発が行われなくなった、と捉えるべきか。ゴム会社の展示物を見る限り20年ほど前から技術開発が止まっているかのようである。ところがゴム会社が商品の販売まで辞めてしまったSiCウェハーについては、事業を開始したときのパートナー住友金属工業から液相による結晶成長法という新たな技術について特許出願が行われている。特許を読むと着実に技術が進歩していることを理解できる。
バブルがはじけて20年以上経ち、新たなイノベーションが期待されているが、それを科学に期待するよりも、新たな機能にチャレンジする技術に期待した方が良いかもしれない。積極的に新たな技術にチャレンジする活動が新たなイノベーションを引き起こす。ゴム会社の高純度SiC技術は歴史の時計が止まったように見えるが、基本特許が多数切れ始めたので新たな技術開発のチャンスが生まれてきている。
前駆体法による高純度SiC合成法は、まだ新たな機能を生み出す技術開発の余地がたくさん残っている面白い技術である。弊社では研究開発必勝法プログラムに新たな技術をセットしたメニューも用意していますのでお問い合わせください。ちなみにこの場合は温故知新戦略となる。
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